PERSPECTIVE

リコリス・ピザのPERSPECTIVEのレビュー・感想・評価

リコリス・ピザ(2021年製作の映画)
4.8
ナイアガラーの端くれとしてエルヴィスを観ようとした矢先、シネフィルの後輩から「なんでプレスリーの音楽を劇場で聴く必要があるんですか」「PTAの最高傑作でしたから見てくださいよぉ」と脅迫され泣く泣く観賞。それでも今年ベスト5には余裕で入りそうな快作だった。全く自分が情けない。

かの有名なサルミアッキの原料リコリスにピザという名前だけで胃もたれおこしそうなタイトル名に違わず、濃ゆい映画・音楽ネタと些細な変化で起こるどうしようもない緊張感は相当なもの。特にショーン・ペンのウィリアム・ホールデンとの一致ぶりやブラッドリー・クーパーの面白さと怖さっときたらもう...

しかし本作の醍醐味はその合間合間に挟まれる青春・恋愛描写にある。
がむしゃらに走り、相手を見つめ、罵倒し合い、顔を埋め、手が触れ...その単純さがまるで猛暑の最中に浴びる冷水のような気持ちよさをもたらしてくれる。特にラストの走るシーンは間違いなく今年の映画断トツの爽快さである。

PTAの作品だからと身構えることなく、是非夏の間に劇場で観てもらいたい一作。少なくとも自分はもう一回観るぞこん畜生。
PERSPECTIVE

PERSPECTIVE