jonajona

リコリス・ピザのjonajonaのレビュー・感想・評価

リコリス・ピザ(2021年製作の映画)
4.5
2人ともフレッシュで最高!
お互い見栄っ張りで全然くっつかない
ゲイリーを演じるのがクーパーホフマンというのは泣ける。本当に優しい顔をするじゃない。アラナハイム演じるアラナがゲイリーにマウントする時の『ふんッ』という顔が最高に憎らしくて素晴らしかった。2人ともいい俳優さん。

ヒロインのアラナのような2回同じ事を言うってキャラは意外といそうでいなかったので新鮮。気丈に年上ぶろうとしてるが自信が無い無い感じが自然と出てる。

トムウェイツとショーンペンの絡み、主人公らに感情移入してる限り対してわからなくとも気に留めずに楽しめる描かれ方なのがすごい良かった。フォークで子供みたいに剣闘しあいだして、調子乗って虎の威を借りてたアラナがドン引きして『え、なに、なにしてるの?』って言い出すのが案外大事。笑える上にあの一言で門外漢である彼女の目線につきやすくなり、変なことに巻き込まれてるという状況だけを楽しめるので実在俳優の背景等は分からなくていいのだとスルーできる。
このショーンペンの役みたいな(あのダイハードのベトナム帰りのバカヘリコプターCIAの様な)戦争を引きずった狂気の情熱バカ男って本当最悪で大好き。
ブラッドリークーパーの白シャツ男とのドタバタ劇はずーーっと面白かった。この何が始まったのか分からず、しかしテンションに巻き込まれるブツギリ展開のライド感がすごいPTAらしくて好き。
今回はしかも全部のストーリーがそれぞれわかりやすく面白い。
女好きすぎて乱暴者でどうしようもないけどラストの瞬間にどうしようもねぇなこいつはと思い少し好きになる。



タクシードライバーのような選挙事務所を外から張る男の姿は、たった一週間前ならおいおいタクシードライバーじゃん!とそれも笑えるシーンになったのだろうが、映画館に笑いはなかった。
杞憂であればいいけれど、恐ろしい時代が始まるのではないかという予感がより強固なものになり続けてる。
日本は膠着し、そんな事にもさして興味が無くなって久しいが、しかしそうも言ってられなくなっている。フィクションがノンフィクションに浸食されている。物語を物語る機会と手段が制限されていく気がする。全部杞憂であればいいのだが。

大変いい映画だったが、ある種のノスタルジーに傾倒していくエンタメを見ているとそれが社会の病理の表出のように見えてきて仕方がなく、最近はなにか得体の知れない恐怖を感じる。
あの頃はよかった、が成熟した先に待つのはあの頃を(出来る事なら)取り戻したい、という思いだろう。この出来る事なら、という願望をさも私なら可能に出来るという身振り手振りで信じ込ませ利用する怪物が現れても、僕はそれをそれだと気付ける自信がない。僕だって先行なんぞに期待はなく、帰りたいあの頃の方を向いている人間だから


【今日の名言】

僕が君を忘れるもんか
君も僕を忘れたりしない

え、何してるの?

私の本当の名前って覚えてる?
jonajona

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