TaiRa

リコリス・ピザのTaiRaのレビュー・感想・評価

リコリス・ピザ(2021年製作の映画)
5.0
ポール・トーマス・アンダーソンの小休止的な映画はいつも走る映画で好き。

PTAとしては、久々に地元=サン・フェルナンド・バレーで撮った映画。イギリスまで飛んだ前作の反動もあるだろうし、地元繋がりでハイムと出会って、彼女たちのMV撮ってた流れも大きい。コロナ禍直後の撮影だった事も相俟って、身内で画面が埋め尽くされているのが、壮大なホームムービーみたいで面白い。家族はもちろん、ほとんど親族みたいなホフマン家やハイム家の面々、そこにディカプリオの父やスピルバーグの娘、ジョナサン・デミの孫なんかも画面に映ってたりする。旧友のジョン・C・ライリーなんかも一瞬登場してたり。地元で身内集めて、先輩の体験記と思い出の中の景色を映画にするっていう個人的な企画なのに、多幸感溢れる瑞々しい傑作にしちゃうんだから、PTAの映画力(ヂカラ)凄えなって思う。『パンチドランク・ラブ』の時も、気合い入った作品続いた後に小休止的に軽い作品撮ってたけど、今作もそういう位置付けだと思う。どっちも恋した人間がよく走る。その単純さが良い。脚本も大筋がなくて、恋愛青春劇と映画業界の奇人変人エピソードのスケッチが続く感じが適当で良い。実話のコラージュで取り留めのない話ばかりなのに、どの場面も面白いから観れちゃうって相当凄い事なんだけどね。近年、スタッフの座組も変化があって、今回から編集はMVで組んでた人になったし、今後の変化も楽しみ。また撮影監督に誰か呼んでくるかもしれないし、音楽もグリーンウッド以外とやったりするかもしれないしね。
TaiRa

TaiRa