多幸感
PTA作品に共通して言えるのはこれだと僕は思っている。
それは映画的な登場人物にとっての運動としてのあらゆる意味でそう言えるかもしれないが、カメラの前に動く人が居る喜びそのものをよくわかっている監督だと思う。
カメラで何かを撮るじゃダメで明確に人を撮る喜びなのだ。
工場の出口というフィックスである工場から従業が出てくるところを切り取ったルミエール兄弟のドキュメンタリー映画なのだがあの映像を観た時に近いものを感じたというか
まぁそもそも全ての映画映像に内在する歓びなのだが
PTA作品で重要なのは兎に角カメラ
フィクションとドキュメントを完全に切り分けないカメラワークがそこにある。
そして起承転結を成立させ切らないエピソードの羅列もいい
PTAはこの仕組みによってリアルに近い感覚を与えてくれている。
この映画を観ていると自分の人生のあの最高な瞬間もひょっとしたら映画と呼べるんじゃないか?と思えてくる。この出来事の羅列という仕組みが観るものの人生の思い出とリンクしてそこから多幸感を産むようになっていると思う。
もう何が言いたいかというと全編全部良かったです。
その中でも僕はウォーターベッドを最初に展示会に出すシーンからの警察署のシークエンスがめちゃくちゃ好きです。
カメラがぴったりヒロインにくっついて移動して主人公と目があって静のステキなシーンからつんざくように警察が入ってきてヒロインが全力疾走で追いかける動へと移行する。見事です。
一台スペクタクルのトラックシーンからのヒロインガン冷めのクソしょうもない朝焼けシーンも最高でしたね
静と動の連なりまさにPTAこれぞ映画です。
映画館で観れてよかったと思う反面そんな枠組み取っ払ってどこで観ても愛おしい作品になっていると思うのでこれからずっとずっと思い出すたび繰り返し観たい昔の恋人みたいな作品です。