今年6月に亡くなられた中島貞夫監督。本作は監督の遺作となった高良健吾主演「多十郎殉愛記」のメイキングドキュメンタリーだ。
東映の屋台骨を支えた巨匠の作品であっても、予算の制限から撮影日数を削ることを求められていた。制作されていく様子からは、創造について楽な現場などないことを改めて教えてくれる。
自分の描きたい物語を現代と融合させて描き切ること。そして、突きつけられる興行成績という数字の現実。あらゆるクリエイターは、この追跡劇を観て感じることがあるのではないだろうか。
東大卒のインテリで、とにかくカミソリのように頭が切れる職人監督のイメージだが、プライベート空間ではみずから台所に立ち、ナルトを切ってスタッフに料理をもてなす人間・中島貞夫の姿も記録されている。