元々はドキュメンタリー映画を撮るつもりだったがスタッフの安全を確保出来ないという凄い理由で劇映画に仕立てた作品。
現にモデルになった女性も、その後、自宅前で銃殺されている。
南米の組織犯罪物映画らしく残酷な描写は多いし(生首が転がっている程度で、そこまでブルータルなシーンは無いが)、安易な救いも無い。
こういった法治が行き届いていない社会で身を守ろうとすると、それがマフィアだろうが軍隊だろうが、余り順法精神の無い何らかの暴力集団に頼らなければ成らないというという中世の様な状況や、加害者も被害者も表裏一体という現実をあぶり出していて悲しい。
ただ・・・テーマは重いし、ここで描かれる事は知られるべき現実・・・ではあるのだが、映画的カタルシスは少ない。
監督の長編第一作という事もあるのだろう、物語を描くという部分では力不足も感じるし、こういうテーマだからこそ、ちゃんと映して描き切って欲しいな。
個人的には、男らしく振る舞おうとしても今一つ頼りないお父さんが味わい深くて好き。
肝心な時に役に立たなかったり、孤独になったら妻に頼って来て急に優しくなったり。「バカね...この人。」という目でヒロインが見るシーンは切ない。
悪い人じゃないんだけどね・・・そんなもんだよねぇ・・・人間って(涙)。