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メイのdm10foreverのレビュー・感想・評価

メイ(2006年製作の映画)
3.8
【エール】

奇しくも先日鑑賞した「場所はいつも旅先だった」でも登場する台北の屋台が舞台(同じ屋台ではないけど)。
どうしたって「台湾」「夜」「屋台」という三種の神器が揃えば、全集中「腹の呼吸」が発動するのも無理はない。

でも残念ながらこの作品では、ヌードル屋台が舞台となっている割には「飯テロ描写」は、実はそれほど多くないので「ジャンクで旨そうな食事のシーン」を期待した人にはちょっと物足りないかも(笑)。

物語は、愛する妻に逃げられ孤独を抱えているヌードル屋台の店主「ルー」、ルーの一人娘でアメリカでの生活を夢見る一人娘の「メイ」、そしてメイに密かに片思いをしつつヌードル店の仕事を手伝っている青年「ジアン」の三人が主人公。

たった12分という尺の中で浮かび上がる、三人三様の人間ドラマ。

ルーは愛する妻が居なくなってしまった事実が未だに受け入れられずにいたが、そこに追い討ちをかけるように大切な一人娘のメイまでもがアメリカ行きを決めてしまったことに心を痛めていた。
そしてその寂しさを紛らすかのように、今日も仕事が終わると友人たちと泥酔するまで飲みあかす。

メイは父のことが心配ではあるんだけど、昔から憧れていたアメリカ行きがようやく現実となるところまで来てちょっぴり浮かれ気味。でもやっぱりお父さんのことも心配だし・・・という揺れ動く心境。

そんな二人を寡黙に見つめながら黙々と仕事をするジアン。
本当はメイに「行かないで」って言いたい気持ちも抑えながら・・・・。

みんな相手のことを思っているからこそ、本当の気持ちが言えずにいる。
もし言葉に出して言ってしまえば、その人を傷つけてしまうかもしれないから・・・。

そんな3人の微妙な距離感。

特に親子って難しいよね。
「何でも言い合える」っていうのも確かにあるんだけど、でも、逆に家族だから言えない(言ってはいけない)っていう言葉だってきっとあると思う(侮辱や侮蔑っていう意味ではないよ。それは家族以外にも言っちゃダメだから)。

どんなことがあろうとも死んでも切ることのできない縁だからこそ、言葉ではなく存在で支えてあげることが必要な場面だってあるし、それができるのが家族なのかもしれない。

だから、相手の気持ちが分かるからこそ、自分は我慢をする。
でも、その我慢は相手に伝わっちゃうから辛い・・・。

ルーとメイはそれぞれが自分にとっては唯一の「家族」。
だからこそ「一緒にいたい」。
だからこそ「応援したい」。


・・・そして、そんな二人の背中をそっと押してあげるジアン。
ジアンのメイへの想いはまだ一方通行。
だから僕の我慢があなたの幸せになるなら、僕は喜んであなたの夢を応援する。
不器用な英語で外国人観光客の相手をするのも(メイがいなくなっても僕がいるから大丈夫)って言うために頑張った努力の賜物。

たぶんメイはジアンの気持ちにはとっくに気がついていたと思う。
だからこそ、このさり気ない男気が嬉しかったんじゃないかな。
メイは自分の責任を背負わせてしまうという事以上に、それを受け入れてでも自分を応援してくれようとするジアンの気持ちが嬉しかったんだと思う。

誰かを応援する人は、誰かから応援される人でもある。

余談。なんと言ってもメイちゃんが可愛い。
正面からも勿論なんだけど、この子は横顔がとにかく美しい。
物憂げで、大人っぽくて、色っぽくて・・・。
もっと彼女の出ている作品を見てみたいのだけど、如何せん誰なのかすらわからない・・・

とりあえず、陰ながら応援します・・・。
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