第34回東京国際映画祭開催中!!
【コンペティション部門】
『クレーン・ランタン』(アゼルバイジャン🇦🇿)ヒラル・バイダロフ監督
複数の女性誘拐の罪で服役中の男性と、法学生の対話が織りなす、芸術的な1本。
誘拐という悪と、法という正義…この二極化された強烈なキャラクター像が、我々の潜在意識に問題を投げかけてくるようである。
私は誘拐された女性たちこそ、人間が持ち得る欲求の象徴であり、誘拐した男性こそ人間そのものを表しているように感じられた。
女性たちにはそれぞれ、自由や美しさ、生と死といった言葉が当てられ、誘拐の背景を語る。
自由を求めること、美しさを求めること、生きたいと思うこと、死にたいと思うこと…そうした人間の根源的な欲望を擬えているようである。
そしてこれらは、本来すべてが表裏一体であり、その欲に対して正誤も善悪もない、ただそこに存在する自然的な事象であるはずだが…我々人間が自分たちでその線引きを図っているのではないだろうか。
その線引きの象徴こそ、我々が作中最も正しいと思い込んでいる法学生その人である。
世の中の絶対的正義である彼も、自然発生的に作られた存在ではなく、人工物のひとつであることは間違いない。
本作の魅力である、美しい風景には、どのシーンを切り取っても、ナイキのスニーカーや錆びついたワゴン車、工業地帯やぽつんとそびえ立つ一軒家など…不自然なほど人工物が共に映ることが印象的である。
いつか壊れ、廃れていく"人工物"に様々な角度から警鐘を鳴らしているのではないだろうか。深読みだろうか……笑
しかし、タイトルにもある「クレーン・ランタン」とは、ある種人生の道標的な存在である一方、それに抹殺される可能性もあると語られている。
我々を導いてくれる灯りは、いつ何時も大切な存在であるが…それが人工的なランタンの灯りなのか、自然のままに発生した炎の灯りなのか、そこには大きな違いがあるだろう。
もちろん、社会という枠組みの中では、人工的に作られた道標、平たく言うと「ルール」が大切であり、誘拐などを善とすることはできまい。
しかしながら、それ以上に自然の持つ表裏一体の力を忘れてはならない。善と悪も同様である。
本作は、ほぼすべてのシーンが定点カメラの中で、人物や木々のみが動いており、ある種絵画を見ているような気分にさえなる。
その穏やかさの中に秘められたロックな思想が垣間見れたとき、鑑賞者それぞれの考えが生まれるのだろう。
監督に言わせれば、こんなに長々とレビューを書くことすらナンセンスなのかもしれない。笑
理解しようとしてはいけない、五感で感じる作品。
私は「表裏一体」を強く感じたが、皆さんはいかが?
〈鑑賞者: ひろ〉
映画祭期間中も、学生応援団が見ることのできた作品をどんどんレビューしていきますので、是非ご覧ください!!
🎥第34回東京国際映画祭
|開催期間:10/30(土)〜11/8(月)
|場所:日比谷・有楽町・銀座地区
|チケット:当日でも席が空いてる作品は購入できますので是非!
また、学生応援団が運営している各種SNSでも映画祭に関する投稿を沢山していきますので、こちらも是非チェックしてみてください。
-----------------------
🔴公式サイト: https://tiffgakusei2020.wixsite.com/advt
🔵Twitter: https://twitter.com/TIFFgakusei
🟢note: https://note.com/tiffgakusei/
🟣Instagram: https://www.instagram.com/tiffgakusei
-----------------------