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ある詩人のlpのレビュー・感想・評価

ある詩人(2021年製作の映画)
4.0
東京国際映画祭にて鑑賞。

コンペ3本目はカザフスタンから『ある詩人』!そしてこれがメチャクチャ良くできていた!

現代を生きる「詩人」と、過去の「伝説の詩人」の半生が交差する。ドラマとしてはスタンダードな設定ながら、「詩」の文化が先細る現状を、現代の格差社会や文化の多様化と併せることで、一般化しつつ外堀を埋めながら描くので、作品のドラマとメッセージが高密度で迫ってくる。この点で舌を巻く。

一点だけ、ストーリー後半で思いっきり主人公の心情の核心に迫りながら、その一歩手前で撤退した点に「おや?」と思ったのだけれども、よくよく考えると明確な結論を回避したことは、オミルバエフからの「自分の頭で考えろ」というメッセージ(ある意味では警鐘)と解釈できる。
実際に今作の届け先が、一部のシネフィルのみ・・・となっしまったら、不発だろうけれども、気概としては大いに「あり」だ。

今作はカザフスタンの「詩」が題材であったけれど、昨今の映画業界、特にミニシアターや映画祭界隈には到底他人事ではないはずなので、そんな作品を東京国際映画祭で観られたことはありがたい限り。満足!
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