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奈落の翅のTagTakのレビュー・感想・評価

奈落の翅(2021年製作の映画)
4.0
小林勇貴の自主映画への原点回帰にして最高傑作。あのアッパーで野蛮な作風が戻ってきて嬉しい!。『孤高の遠吠』における荒々しいゲリラ撮影そのままに、スケーターと市民との衝突を実在感溢れるほどに活写することで、コロナによって日本全体で勢いを増す病的な自警団意識や同調圧力を批判することに成功してる。
それでいて、社会に居場所のない男がスケボー集団に居場所を見つける青春物語としてもグッとくる。ボーイ・フッド的な友情を高揚感交えて描きながらも、社会悪として排除されるのも少し納得がいく余地を残している、善悪で割り切ることができない絶妙なバランス。被写体との向き合い方が誠実。
もう一つの魅力は都市映画だったこと。"整備された場所ほど滑りやすい"というスケボーの特性を上手く活用し、東京都心で大胆なゲリラを行ったことで、コロナ自粛によって閑散とした東京の風景をフィルムに刻んでる。引きの画で東京のランドマークや高層ビルを御座れと映す新海誠とは大違いで、スケボーと同じ視点で地面スレスレの場所から撮ったことで巨大な建物が乱立する風景を活写。そして、自粛によって閑散としてるのも相まって映画的な情景を創造しているから驚き。少し用法は違うが『ラブ&ポップ』の都市空間の表現方法に近いような気がする。
惜しむらくは、後半のスケボー狩り集団が登場するあたりから、フィクション度が増すことだ。前半における生々しいまでの衝突に比べると嘘臭く感じて、別の映画は始まって感が強く残念だった。
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