LeeLung

マイスモールランドのLeeLungのネタバレレビュー・内容・結末

マイスモールランド(2022年製作の映画)
-

このレビューはネタバレを含みます

冒頭に、スクリーンに表れたタイトルを囲ったのは埼玉県の形だった。マイスモールランド。国を持たない民族は国から逃れた先で、ここから出られない。ただただしんどい。胸が締め付けられる。
サっちゃんは、クルド人であるということのアイデンティティが揺らいで久しい。川口市のふつーの高校生で、小学生の途中から自分のルーツについてのアイデンティティが揺らいでいて、「私はドイツ人」と名乗るも違和がある。そもそもドイツ人ではないし、5歳まで過ごした故郷の記憶もほとんどない。日本人としての私しかいないのに、帰宅するとクルド人が集まっていて、「クルド人」でいざるを得ない。見た目も相まって初対面の人からは「外人さん」(←本文から脱線するが筆者は外人さんという言葉に侮蔑的ニュアンスを感じて嫌いである)と呼ばれる。
だから、親の選んだ許婚と結婚なんて、まっぴらごめんだし、ふつーに恋愛を楽しみたい。
そんな、長女サっちゃんの様子を父親は感じ取っていた。乳飲み子で故郷から日本に来た次女も、故郷を知らない長男も日本でしか暮らせない。
けれど、父親には自分の中のクルド人としての根強いアイデンティティがある。
なんとかして、子どもたちに在留資格を、と考えを巡らせた父親には言葉も出ないほど辛い気持ちになった。
国、どこの国かわからないけれど、帰ってしまえば、命の保証はない。
それなのに、親の在留資格を諦めれば子には在留資格を認める、という判例を持つ日本はなんて残酷なのだろう。命をなんとも思っていない。

不法就労で入管に収監してしまえば、サっちゃんのように、アンダーグラウンドな収入を得ようとすることは想像に難くない。あのパパ活は日本政府がさせている、と表現しても過言ではないように思う。
更に遡ると、難民申請を理由不明で不認可を出して、仮放免という宙ぶらりんの状態で放り出す。
無職で家族が食えるわけもないのに。本当に本当に、日本政府は人の命をなんとも思っていない。

日本人すべての人に見てほしい。
これでも自民党政権で良いと言えますか?
…でも、日本ってレイシストが多いから「良い」って思うのかもしれないと、筆者は暗澹たる気持ちで映画館からの帰路につきました。
LeeLung

LeeLung