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マイスモールランドのbluebeanのレビュー・感想・評価

マイスモールランド(2022年製作の映画)
4.0
難民として日本に来たの少女の目を通すことで、見慣れた日本の風景が全く違うものに見える体験ができる映画でした。序盤の結婚式のシーンの民族衣装や聡太の描くアートのカラフルさと、日本のモノトーン基調の街並みが対比されているようでよりいっそう感じました。

ニュースでたまに聞く日本の入管の問題ですが、ドキュメンタリーのような視点で感情移入することで、当事者にとっていかに理粉塵で苦しいものであり、大きな問題であることを見に染みて理解できます。
分かりやすく理不尽な仕打ちをするすごく悪い人間達を描くのではなく、あくまで日本のシステムの恐ろしさがたんたんと描かれているのが素晴らしいです。政治家や入管職員などを悪者にして話を単純にするようなシーンが一切ありません。そのことで、観客はこの答えのない難しい問題を、自分の頭で考えざるを得なくなります。

それと並行して、シンプルに青春恋愛ものとしてもすごく好きです。複雑なテーマでありながら、その背景によって、引き裂かれる両思いの2人という定番の状況が出来上がっています。2人のやりとりはセリフも控えめで抑制が効いていながら、感情が溢れ出ている感じ。ほっぺへのキスの意味とか、暗示的な表現がまた良かったです。

全編通して説明的なシーンは全くなく、ちょっとしたセリフのやりとりや小道具などの象徴的な要素で全てが表現されていました。ドイツ人というキャラ、努力は必ず報われるという教師、日本語ができることで押しつけられる頼まれごとが書かれたポストイット、県境を示す看板、外人さんとは思えないと感心するスーパーの客、などなど、好きなシーンがたくさんありました。

手の赤い色とか、クルドの作法を注意する父親とか、サーリャにってクルドというアイデンティティがある種の呪いのようになっているのが見ていて辛い。それでも、父親の心を理解した彼女がラストに見せるある動作を見た時の感動はすごかったです。

しかし、サーリャ役の嵐莉奈が美人すぎました。それによってこの映画の重たすぎる部分がだいぶ緩和されていた気がします。そして家族役の役者が実際の家族だということを後で知ってびっくり!
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