てっちゃん

マイスモールランドのてっちゃんのレビュー・感想・評価

マイスモールランド(2022年製作の映画)
4.1
ご存知の通り、入管法の改悪(個人的には)が問題になっている。

問題にはなっているが、萎縮している大手メディアはジャーナリズムを失い、政府の拡声器としてしか機能していない(ただ起こった出来事を垂れ流すだけ)という、あまりにも恥ずかしい現状では、なにがどう変わったのかを知る手段は個人に委ねられたわけであり、それを知ろうとする時間がない人達はどうするのか。

答えは単純明快で、メディアから受け取るしかない。
そのメディアが死んでいる状況では、まあお察しの世の中になっていくのも当然のこと。
取捨選択の情報入手が重要になってくる。

さて、本作は入管法や難民問題とかそういったものを含んではいるものの、基本的には主人公サーリャの目線で日々を描いている。
そこに前述したような要素が入ってくる感じ。

だからこそ、サーリャ一家とその周囲の人たちの行方が気になるし、なんとかならんのかと怒りが生まれてくる。
でも本作は説教臭くはなく、映画という形で問いかけていくし、なによりも感じたのは"考えさせる"ということだ。

なにを"考えさせる"のか、それは人によって違うだろう。
私は本作を観て、日本大丈夫ですか?と思った。
先日、正気を疑う発言をした国会議員がいた。
全く中身がわからない、ブラックボックスと化した入管がある。
そこで人間の行動とは微塵も感じられない扱いをされ、亡くなった方がいる。

難民条例に加盟しているのに、難民認定率は0.7%である(G7の中だとぶっちぎりの最下位。他は20〜60%くらい。つまりは全く話にならん)。
さらに入管法改正により、その認定率は下がっていくだろう。
難民の方達は何を求めて日本に来たのだろうか。
日本でなければどうなっていたのか。
日本は先進国だと謳っている筈なのに、なにこれ?
これが美しい国ニッポンって言って恥ずかしくないの?

本作では、自分はいい人を出してくる人が沢山いる。
そりゃいいことをやりたくて、自分に非があることを嫌うんだから、いい人を演じるのだと思うよ。

でも社会全体がいい人を演じるのに必死な訳だから(私も含めて)、いい人の押し付けなり強要が出てきて、少数派の意見なんてますます封じ込まれる。
で、考えない人たちが集まった結果が、今の美しい国ニッポンではないでしょうか。

その皺寄せが、本作のような結果を生むのではないでしょうか。

サーリャは自分を確立することに成功する。
それは確固たるアイデンティティがあり、周りに自分の想いを伝えたからだ。
私たちも確固たる考えを持つ必要がある。
その考えに違いがあるのは当たり前。
だからこそ話し合うことが必要ではなかろうか。
しかし、今の政府は話し合うということをしない。

気持ちよくなってきたところで、本作の弟くんの清涼剤効果はとてつもないことになっているとこも見所です。
一緒に観た方は、嵐莉奈さんの美貌に大興奮しておりました。
嵐莉奈さんの演技もすごく良かったな。

良い映画って、登場人物たちが私たちの生きる世界のどこかに存在するような感じが観賞後も続くってのがあると思うんだけど、本作ではそれを感じ取ることができましたとさ。
てっちゃん

てっちゃん