araki

マイスモールランドのarakiのネタバレレビュー・内容・結末

マイスモールランド(2022年製作の映画)
4.5

このレビューはネタバレを含みます

社会派映画はスコアつけるの難しいのだけど…。

今自分が注目している移民・難民問題に触れた映画。
主人公サーリャはクルド人。幼い頃故郷を追われ家族で日本にやってきた。
サーリャ一家が日本にいるためには難民申請を繰り返し、ひたすら在留資格の更新を行うのみ。
だが日本の難民認定率はたった0.3%。
これは他の先進国と比べ明らかに低い数値を叩き出しており、国連からは非難されている。

高校3年生、大学受験を控えた主人公のサーリャは幼い頃に家族と共に来日した。その為、日本語も堪能で生活面も問題なく、小学校の先生になるという夢を叶えるために日々奮闘中だ。志望する大学もこのまま行けば問題なく入学できるだろうとのこと。彼女は自身のアイデンティティを日本に見出している。
しかし、アルバイト先のコンビニでの接客中、婦人客から「日本語がお上手ね。すごいわね。」「でも、いつかはお国に帰るんでしょう?」と悪意のない何気ない言葉。
日本人の潜在意識の中にある悪意のない差別。
言った側は善意であっただろうが受け取ったサーリャは複雑な気持ちになる。
そんな中、難民申請が不許可となり家族全員が仮放免となってしまう。
仮放免とは在留資格が切れて不法滞在となってしまった外国人を本来なら入国管理局に収容するところを条件付きで外での生活を許される状態のことだ。
仮放免者は就労は許されず管轄する都道府県からの外出も認められない。また国民保険への加入も出来なくなるので病院へかかれば多額の医療費の支払いを余儀なくされるだろう。
しかしそれでも働かなければ家族は養えない。生活のため父のマズルムは不法就労を余儀なくすることに。
サーリャには妹とまだ幼い弟がおり、妹と弟は日本で生まれて日本で育った為に母国語も分からず日本語しか分からない。
そんな状況でもし強制送還され母国に返されることになったら?
不安で仕方がないだろう。
そんな不安定な環境の中、父の不法就労が見つかり入管に収容される事になり……。

そんな家族の葛藤を描いているのが本作なのだが、これが今実際に埼玉のクルド人問題となっている。
フィクションであるが限りなく現状に近い。
仮放免となれば、日常生活のありとあらゆる事を諦めなければならない。
大学進学なんてもってのほかだ。仮放免者は大学入学なんてできないのだから。

本作に限らず、子どもたちが未来に向かって奮闘しているのに環境のせいで夢への断念を余儀なくされるシーンを見るのが辛くてたまらない。
日本の難民認定基準が厳しすぎるという意見もある中、ゴミ出しルールやマナーを守らない外国人が地元住人との間で軋轢が生じているのも確かだ。
多様化など口では簡単に言えるが実際はどうなのだろうか。
少子化が進む日本では次世代の労働の担い手として移民の受け入れを促進する方針を強めているが、受け入れれば受け入れただけトラブルが生まれることは避けられないだろう。
しかし、だからと言って彼らの権利を侵害してはならない。
今後、彼らと共生する事になる私たちにとって大きな課題であると思う。
その上で、両者の権利を尊重しつつ常に対等である事を忘れずに、未来ある子どもたちが夢を諦めなければならないなんて残酷な未来にならないように、しっかりと考えるべきだと思った。
なんて、口では簡単に言えるんだけどね。
難しすぎて答えが出ないからみんなで一緒に考えようよ〜!
araki

araki