ぺち

マイスモールランドのぺちのレビュー・感想・評価

マイスモールランド(2022年製作の映画)
5.0
一人でも多くの人に届いて欲しい作品だと感じたので星5をつけます、

これは私個人の話ですが、大学時代に学部柄“難民”や“移民”について学ぶ機会が多く、興味を持っていた分野だったので自分から映画祭だったり色んなイベントに足を運んだりもしていたんだけど、
久々にこのテーマに触れてみて、卒業以来触れる機会もほぼなくなっていたし知識としてもやっぱり色々抜け落ちてるなと反省しました、

この映画を観ながらクルド難民や難民申請〜認定制度、強制送還や在留資格、色んなことを自然と調べていたし、
日本は特に難民申請の受け入れ率が著しく低い現状や、難民申請が家族全員分通らず子どもにだけビザがおりて家族はバラバラになってしまう事例など、
この作品に触れて色んな過去に学んだ知識が呼び起こされたりもしました、

本当に観ていて苦しくて色んな気持ちになって涙が止まらなかった、
もし私も直接的に身近で関わっていたとして、
どうにかしてあげたいとどんなに願っても、その時実際にしてあげられることって、少しでも生活の足しになるようにお金を渡すこととか、一泊だけお家に泊めてあげることとか、お弁当多めに渡してあげるとかきっとそれくらいのことしかなくて、
どんなに涙ながらに現実の苦しみや酷さを訴えたって国で決められた法や制度は簡単に覆せないし、どうしたって感情論で助けてあげられる問題じゃなくて、
だからこそ難民として日本に逃げてきたサーリャたち一家の気持ちはもちろんのこと、
彼ら彼女らにとって身近な存在として描かれていた聡太や聡太ママ、コンビニ店長さん側の気持ちになっても同じくらい苦しい気持ちになった、
でもこのテーマを“自分事”として、自分だったら、と感情移入してここまで深く考える豊かなきっかけを与えてくれた時点で、辛くても本当に観てよかったと思える作品でした、

嵐莉菜ちゃんは言わずもがなお顔が美しすぎるのだが真っ直ぐなお芝居もとても心を打たれたし本当に彼女だからこそ演じられた役なんだと思う、弟くんが愛おしすぎて泣いちゃったほんとに、😭😭🫂
奥平大兼くんの芝居がなんかかなり好みど直球で良かった、いい役者見つけてしまった…の気持ちです、これから追っていきます


ちょっと余談ですが、大学の時難民イベントに足を運んだ際に、ジャーナリストの堀潤さんのお話を伺う機会があって、その時に「まずは具体的に誰かの物語に触れて、知ることで、大きな主語ではなく、小さな主語で話すことが大切」というニュアンスのお話をされていたのが未だに印象に残っています、
“難民”“移民”という大きな主語だけで括ると、自分には関係ない、よくわからない、そうやって線を引いて他人事扱いしてしまう日本人が多いと思うけど、
まさにこの映画で描いてくれているような、その大きな主語の中に含まれる“クルド難民のサーリャとその家族”という誰かの物語に触れた時、もっと身近な、私たちが暮らしている日常のすぐそばで起こりうる話として、
小さな主語でこのテーマを捉えることができる、この映画のタイトルでもある“マイスモールランド”にもどこか通ずる部分なのかなと思ったりしました、

普通に日本で暮らしていて、毎日難民について考えたりそのテーマに触れることは難しくても、こうやって作品としてその中の誰かの人生に焦点を当てて描いてくれるということ、そしてこういう作品に触れて、まずは一部でも“知る”こと、そこから更に調べたりして“知ろうとする”ことは、私たちの大きな主語で捉えてしまう悪い癖やどこか遠い国の知らない人たち、という他人事として見つめてしまう姿勢をやめるきっかけに繋がると思います、
いきなりこういうテーマを勉強、という形で学ぶ場は学生終わると(学生でもあんまないか?)なかなかないけれど少なくともこの映画を観た人は意識せずとも何かしら気になって調べた人が多いと思うし、
何であっても、知らなかったことを恥ずかしいと言えるのならその気持ちを持った時点で立派な第一歩だと思う、そこから知ろうとすること、そして知った人がそれをまた身近な人に広めていくことが本当に大切なことだと思います、

サーリャを演じていた嵐莉菜さんは、実際に5カ国のマルチルーツの持ち主で、監督の川和田恵真さんもイギリスと日本のルーツを持つ方とのことで、本当にリアリティに迫りつつも細かい知識まで丁寧に織り込みながら作られた作品だと感じました、何も知らない人でも学ぶ入口にピッタリの観やすい映画だと思うので是非観てください!

他にもこういったテーマの作品探すと意外とあるし私も何作かクリップしてるのでちゃんと触れていきたいし色々学び直したいなとも思いました、
ぺち

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