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珈琲時光のScriabinのレビュー・感想・評価

珈琲時光(2003年製作の映画)
3.5
『東京物語』同様、郷愁をそそる風景だった。特に見慣れたJRをたくさん使ってくれたのは嬉しいが、映画のほとんどが電車シーンで埋め尽くされていてちょっと強迫的な感じがした。
後妻の若い感じや一青窈のさばさばした話しぶりは、素直にこういう人いるよねって思わせる良い演技だったと思う。濱口は「自然な演技をしよう」という意識が見えてしまう不自然な演技だったというけど、なんていうか、不自然な人ってよくいるよね。現実の生活でもそういう人の動きを見るのが好きだから、こういう「まずい演技」は見ていてとても気持ちがいい。
『東京物語』のオマージュ、と言ってしまえば、無批判な家父長制の表象も解決できるんですね。言い訳って大事。たしかにこの時代にあってもご飯を作る母親の姿はありふれたものだったけど、2020年代に入ってこれを無批判に見ることは許されない。「いまここ」ではなく、過ぎ去りし東京の風景としてしか享受できない。何も考えたくないとき、思い出を美化したいときには有効な映画だと思った。
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