Hiro

ドーナツもりのHiroのレビュー・感想・評価

ドーナツもり(2022年製作の映画)
4.1
「ドーナツもり」
“あなたのことが好きですって、最高の褒め言葉じゃないですか。”

凄く好きなテイストの作品。緩やかで、穏やかで、だけど決してだらけているわけでも、怠けている訳でもなくて、各々がそれぞれの日々の中で懸命に息をしていた。誰かを愛すことも、愛される事も、愛した人を忘れる事も、全てはままならない。大人になれば上手くなると思っていたはずのことは、どんどん下手くそになっていくばかり。

とにかくドーナツが食べたくなる作品。イーストを使った、あのふわふわなドーナツ。しかもケース入り。あんなお店があったら絶対に通ってしまいます。
主人公を演じた中澤梓佐さんの、流れる雲のような不思議な雰囲気がこの作品にぴったり合っていて、とても素敵だった。

登場する人たちも、全員愛おしいです。とくに、ちいちゃん。何回も「半分こする?」って聞いちゃうの可愛い。でも、欲しい答えって「半分こしよ」じゃないんだよね。多分。
ちいちゃんと公子が階段でビール片手に語るシーンも大好き。

人は誰かや何かと出会うことで、心の中にある絶対的な空洞を、少しずつ埋めていくのかなぁ。いや、もしかしたら埋めるのではなくて、その空いた穴からお互いを見つめあっているのかもしれないです。
良い作品でした。
Hiro

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