KOUSAKA

君は行く先を知らないのKOUSAKAのネタバレレビュー・内容・結末

君は行く先を知らない(2021年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

ジャファル・パナヒの息子さんも映画監督だったとは知りませんでした。

お父さんの『人生タクシー』はその年の私的ベスト1でしたし、過去作『チャドルと生きる』『オフサイド・ガールズ』『これは映画ではない』など、とにかく全部好きなので、今作も勝手に期待値高めでしたが、その期待値を(作風面では良い意味での裏切りもありつつ)ちゃんと越えてくる、かなりの力作でした!

まずアバンタイトルの時点で天才。イラン映画でピアノインストから始まるなんて珍しいな~と思ってたら、6歳の次男くんが、お父さんのギブスに落書きされたピアノを弾く真似をしているシーンに繋がる。もうセンスありすぎ。

そのままタイトルが出るシーンまでは長回しのワンショットが続いて、これから先どうなるか分からない長男の未来を暗示しているように、画面奥に映る道路はぼやけて見える。上手い!

オープニングで驚愕しているのも束の間、実は思ったよりコミカルな作風でビックリしっぱなしでした。次男くんの腰振りダンス、可愛かったなー😆イラン映画は本当に子役が魅力的ですよねー。

でもくだらない可笑しなことをやってるときに限って、この映画は要注意で、例えば車内でオシッコがどうのこうのとくだらない歌を次男と父親が歌っているシーンで、横にカメラが動いていくと、長男が突然落涙してビックリさせられたりします。誰かが可笑しなことをやっていると、その横で誰かが泣いているという独特の演出がお見事でした。

2001年宇宙の旅、バットマン、自転車競技のE.アームストロングの話など、かなり欧米カルチャー情報をちゃんと理解している家族なんだなーと思いました。

長男がなぜ亡命するのか直接的な説明はありませんが、おそらく他国文化にこれほどオープンな家庭だから、古い価値観を押し付けてくる国の権力側や周りの社会に睨まれていたのかもしれません。飼い犬の名前もジェシーですしね。

イランが舞台であることを全面的に生かした画面構成、とにかくロケ地が素晴らしすぎます。特にロングショットを活かしたシーンはどれも素晴らしい!終盤でもまた次男くんのキュートな腰振りダンスが見れました😆

長男との別離や愛犬ジェシーとの辛いお別れも経て、どこまでも続く乾いた荒野をたくましく駆け抜けていく家族たちに幸あれ!!
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