このレビューはネタバレを含みます
これは「考えすぎるな、感じろ」の作品なのではないか……と思ったけどどうなんだろう。
個人的な背景描写がほとんどない。
この逃避行の目的が「全財産を投げうってお兄ちゃんの亡命にワンチャンかけてる」というのはじわじわ察されるのだけど、
大人陣の考えは最後までなんとなくしか掴めない。
いきさつは省かれているから誰か一人に肩入れすることもないのだけれど、心情だけは想像ができる。
とにかく、カメラワークが感情を一人ずつ丁寧に追っていく作りになっている。ここのカットは母メイン、ここのカットは次男メインというふうに。
長回しが多いのもその演出に貢献している。
この作品は「家族の別れ」をテーマにした群像劇。
ほぼ車内のワンシチュエーションなのにもかかわらず、上手く出来ているなぁと思う。
ムーディーなイランの歌謡曲をキレキレの力強いダンスで踊る次男と母が最高。
口を大きく開けて楽しそうに歌うのが良い。
明らかに長男は父似で次男は母似だ。
車内は終始ピリピリしているけど、家族それぞれが(割と)愛すべきキャラクターだと感じた。
昔歴史の教科書で防人の歌や貧窮問答歌を読んだ時と、感想が似ている気がします
