菩薩

ユニの菩薩のレビュー・感想・評価

ユニ(2021年製作の映画)
3.9
紫と聞くと欲求不満の色だと感じてしまうのは安直な結びつけかもしれないが、本作に於いてはあながち見当はずれでも無い様に思える。勿論性的にと言う意味合いもあるが、何よりユニが不満に感じているのは自分の決断で自分の将来を決められない現実に対してと、そうまでして決めたいとお思える将来が無い現実との間の葛藤だろう。ここでは無いどこかへとか、何者でもない自分になんて主題は既に擦り倒されていると思うが、モラトリアムを謳歌する時間的・経済的余裕があった自分達がそれに対していちゃもんを付けるのはお門違いであり、女子には教育よりも結婚をとの「常識」が当然の様に罷り通る社会の中で、現代的な価値観を持ち始めた彼女達に覆い被さる抑圧は尚の事熾烈な物になって行く。突然舞い込んで来る三件の求婚も全てが彼女の選択では勿論無く、いや…急に言われても…は本来であれば当然の反応であるし、それこそ二人目のおっさんに関しては第二夫人目当て、かつ「処女」である事に価値を見出してくる始末。結婚が即妊娠→出産と結びつけられてしまえば尚の事ユニの将来に対する選択肢は狭められる事になるし、その期待に応えられなければ「嫁として失格」の地獄の様な烙印を押される事になる、その決断をまだ10代後半の少女の手に委ねる(中にはそれすらも奪われる)のは残酷でしか無い(あくまで自分の価値観に基づけば、であるが)。男性優位の社会構造を維持する為に教育を取り上げ家の中に押し込める手段を取り続ける社会に対する反抗、実際に現代を生きる若い世代への可能性の提示、と言う意味ではあのラストも致し方無いように思う。映画に関係ないがこれを観た今日、マララ・ユスフザイさんの結婚が報じられたのは何かの縁のような気がする、どうぞお幸せに。
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