アン子

狼と羊のアン子のレビュー・感想・評価

狼と羊(2016年製作の映画)
5.0
ストーリーはあってないような映画。
惹きつけられる描写と実測感のある撮り方で、おそらく**のリアル通りの暮らしぶりなのに、日本とは違いすぎる生活に驚いてしまう
羊が生活にとってとても重要な世界で、昼のシーンでは牧童が羊を追い回し、夜のシーンでは狼や異物が人間のまわりをうろついている。
夜のシーンが特に好きで、薄暗い中、
実際に狼を撮る代わりに狼の皮を被った(?)人間と、小屋よりもいやに大きいマッパの女性(?)が、狼の呼吸音を出しながら歩いたりうろついたりするだけ
高原は薄暗くなると遠近感がなくなって、遠くから真っ白いものがにじり歩いてくると、まるで空を浮いてこっちに向かってくるような気がしてくる。
歩き方も大股ではないので、遠くから見ているこちら側では人間が歩いているのか、四角い形の何かがゆらめいているのかがわからなくなって、まるでいったんもめんがこっちに近づいてくるかのような不気味さがあった。
夜と昼のシーンの切り替えの間に効果音が挟まれていなくて、あっさり世界の切り替えが行われてしまう。二つの世界には明らかに別の価値観が存在しており、その違いの怖さの説明を抜かれているから、二つが混じり合うことは決してなくて、混じり合わないことが当たり前の世界なんだ、ということが言われなくても理解できてしまった。電気が普及する前の、おじいちゃんたちが言っていた夜の怖さ、それを俯瞰で受け入れている感と同じ匂いを感じた。

子供達や大人は粗末な生活をしており、勉学などなく皆働きすぎているからか、全員の会話は大体悪口。子供もタバコを吸って遊んでいて、子供が失踪しても大問題にはならない(狼に喰われたんだよ、で終わる雰囲気)。
途中、子供の一人が言われのない理由で島流しみたいに町に送られていく。まともな味付けのご飯もないし、街のほうが投石具よりもっとすごい遊び道具もあるよ、と思ったが、子供はすっごく悲しそうに行ってしまって、私たちから見てほっとする結果でも、あちら側からしたら悲しい結末なんだなと思った。
アン子

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