日本人が入域を厳しく制限されている国後島の現在を映したドキュメンタリー。
北方領土について、概念や経緯の知識はあってもイメージや情動が湧きづらかったのは、日本人が北方領土に暮らしていた頃の情報や資料へのアクセスが閉ざされ、依拠するところが人々の記憶の中だけに封印されたからだとわかりました。
強制退去させられた日本人は徹底した持ち物検査・身体検査をされ、写真も持ち出すことが許されなかったためだとわかりました。
島内に管理されていると思われる写真で、五里霧中だった国後島での日本人の活気や活力そして華やぎのある暮らしぶりを、初めて見ることができたのが、大きな収穫でした。
写真達から見る日本人の暮らしや町に辺境感はなく、人々は日本の文化や伝統を継承し、愛着を持って十二分に住みこなしていたと、存分に見て取れました。
一方現在、住人の笑顔は戦勝記念パレードで見られましたが、それ以外は人々のセリフが全編通じてどことなく投げやりで軽く捨て鉢気味な印象がありました。
人々はベラルーシやクラスノヤルスク等はるばる遠くから入植したようでしたが、島でうまく住みこなすことができず、中央からもほったらかしで将来が描けない、日本人がいれば産業を育て、雇用も生まれ、生活が向上しそう、と共存したい気持がにじみ出ているように感じました。
荒廃した風景、掘れば日本人の遺物がゴロゴロ出土する陸地、ゴミ拾いはなされない海辺。。
海をはさんで対岸に見える北海道の冠雪した山々が対比的に美しくまた麗しく見えました。
ですがどのような光景であっても、北方領土の映像を見れたこと、これは私の認識の大きな大きなアップデートとなりました。
そして領土問題について、安全保障について、地政学について、考えを深める絶好の機会となりました。