ぴんゆか

オッペンハイマーのぴんゆかのレビュー・感想・評価

オッペンハイマー(2023年製作の映画)
3.3
時空をいじくりまくらないノーラン映画は初めてです。
今回相当本気だなというのはいつもと全く違うジャンルで今までヒットを生んだ手法を封印したことからは勿論、史実に沿った作品でポリコレ票は見込めないこと、そして何より監督の配偶者であり共同製作者であるEmma Thomasに子供に伝えたいことを詰めてると言わしめたことから伝わってくる。

いつもご寵愛のCillianをはじめとし、Robert Downey juniorやMatt Demonのような言わずもがなのスターから近年活躍の場を広げるFlorian PughやRami Malekのような若手実力陣まで起用したことも気合いの程を表してるといえよう。

ナチに対抗すべく、ドイツに対抗すべくといいつつしていた行動が、結果的にはOppenheimer自らをまたヒトラーのような存在に変えうりつつあったのは皮肉だが認めざるを得ないと思う。

狂喜乱舞して拍手喝采する聴取の中で自分の"罪"と対峙するように神妙な面持ちで現れるOppenheimer改めCillian Murphyのさまは見事である。
とはいえ、彼は自身のキャリアと世界的名誉のために積極的にこのプロジェクトに参加したわけであり、決してそのあと後悔したと述べたりそのような態度を表明したとてそれもまたただ彼自身の免罪符であっただけとも捉えられるし、彼が原爆開発を主導したという事実は変わらないのである。

遅かれ早かれ原爆はこの世に誕生するものだったといえるし、第二次世界大戦時の日本は残念ながら今のロシアとは比べ物にならないくらい止まることを知らないマグロのように積極的に戦争を起こしていたことも事実だ。
また全ての発明がまた失敗や功罪を伴うものであり、また発展によるそれらの出現はある種不可避なものでもある。
しかしながら自分達の行為は世界中を救った、アメリカはヒーローだったとの見解がこれまで普通であったアメリカにおいて、原爆の投下がどれほどの被害を及ぼし(劇中では具体的な死亡者数に言及する場面がある)、また原爆の誕生がどう世界を永遠に変えることになってしまったかという現実を突きつけるのは非常に意味があり、また勇気があることだと思う。

日本では上映未定とのことだが、このような歴史的価値のある変化こそ日本人は知るべきであり、またそれまでの自国の経緯と行いについても学び、未来に活かす必要と責務がある。
またこのタイミングでこのような映画が作られ、公開された意味を観客は重く捉え考えるべきだろう。我々の眼前には明らかに新たな局面が広がっており、決断を迫られる時もそう遠くないはずだ。


ちなみにノーラン作品を見てるといつも感じる、
俺はこんなことも分かる、観客はこの知識についてこれるのか?感は健在。こう言ってはあれだがインテリとして認められたい強い顕示欲かコンプレックスかなんかあるんだろうね。
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