グリパス

オッペンハイマーのグリパスのネタバレレビュー・内容・結末

オッペンハイマー(2023年製作の映画)
-

このレビューはネタバレを含みます

ノーラン作品映画館で初鑑賞+IMAX
暗く重く自分は目を逸らしたくなるような映画だった
この映画に関して点数や簡単な気持ちを表せるほど自分の中で整理できないし面白かったなど決して言えない複雑な作品
(本当におこがましいけどこれがアカデミー賞作品賞を獲るには納得だけど複雑な思いを抱いてしまう)
それでも核の脅威やオッペンハイマーの苦悩を俳優の演技と演出で見事に描き切ったと思う
アメリカンプロメテウスをあらかじめ読了してから本作に挑んだが読んでた方がスッと入るような内容だったしむしろ読んだ方がそれぞれの登場人物の背景や関係、時代背景がわかるしクリアになるので読むことを強くオススメする
読めばより深くこの映画の構造や意味を理解できると思う
原作と全くおんなじ印象を全ての登場人物に感じ、迫力ある映像と音、そして何よりも心象風景の表現の仕方は圧倒的かつ繊細で衝動的だった
まるで自分のことかのように錯覚する場面が多々あり、何回も見入ってしまう没入感はさすがノーランだと思った
体感2時間もなかったそれくらい没入してた
音楽は鬼気迫るものや不穏な音楽まであらゆるバリエーションがありより物語を豊かにさせてたと思う
こんなにも人物のイメージと複雑な感情を一致させられる俳優陣の凄さには圧巻
特にロバート、キティ、ストローズ、テラー、グローブスは個人的優勝
ここまで鮮明度の高い映像を見てるとそこにいるような気持ちになるしより登場人物に近づけるような印象を受けた
冒頭の大学での研究シーンと化学反応が交互に描かれるシーンはロバートの心が解放され衝動的になっていくさまを描いていると思った
聴聞会でジーンとの不倫を暴露されるシーンでロバートが裸になりジーンと行為をするシーンは妻キティ、そして公に丸裸される様を見事に表現したなと思う
本を読んだ時と同じ気持ちになった
本当に胸糞悪い
特に印象に残っているシーンはトリニティ実験の爆発の静かな光明なシーンからの突然の怒号のような大爆発はトラウマ級だし少し涙が出た
これが原子爆弾なのかと思うまもなく大勢が喜ぶ姿は流石に見てみて複雑になった
その後の講演の時の聴衆の足を足踏みするシーンはその前に描かれていたがその時は何も思わなかったが爆発シーンを見た後だと印象がガラリと変わるとても嫌なシーンだったし肌が爛れた若者や黒く焦げた死体はその罪の意識や責任を表してると同時に原爆の深刻さを描いている十分なシーンだった
肌が爛れいてる若者はノーラン監督の娘であることがノーラン監督自身は決して他人事に核を描写しているわけではないことがよくわかる非常に重要な場面である
二つの爆弾が運ばれるシーンは絶望しかなかった
ポークパイハットとパイプを加えるシーンはこれぞオッペンハイマーだと思った
カラーはオッペンハイマー視点、白黒はストローズ視点で物事が描かれており主観客観の二つの視点でこの物語が見れる構造になっており、時系列は相変わらずのバラバラだが物語として伏線回収や締め方や盛り上げ方は魅せるなーと思った
淡々と進むストーリーではなく振り返るように話が進むので個人的にはわかりやすい構造になってると思った
オッペンハイマーとグローブスがトリニティ実験の開始前に話した核分裂が大気に引火することがブラックユーモアだある話は今作において重要なシーンであり、それがラストで世界を破滅に追いやったことを強く印象に残るようにしていると思う
最後のアインシュタインとの会話も皮肉めいていると思ったオッペンハイマーの名誉回復のシーンは自分たちを満足させるようにしたことだとアイシュタインは述べているがそれはオッペンハイマーが原爆を作ったことにも当てはまるのではないかと疑問に思う
この映画は核に関しての多くの懸念を残しつつ、現在生きている自分たちが置かれている状況を理解することがいかに重要であるかで幕を閉じたと思った
ここまで多面的な感想持ったの初めてかも
この映画を見てより核に関しての危機感やこの世界には核兵器の脅威がある世界であることを再認識させてくれると同時に自分の中での核への関心がより高まった意義ある映画になった
(この映画を見るためにノーラン作品全鑑賞+アメリカンプロメテウスを読了して挑むぐらい気合を入れてみたがそもそもこの作品を知る前はオッペンハイマーが誰かなんて1ミリも知らなかったし核に関しても関心の低さは程度が知れるレベルでアホだったけどこの作品が世の中に発信されたことで知ることができたし核に対してより一層の関心を持つことができた
あとノーランの映画ほんとにすごいわ
本当に勉強になったし自分も成長できたと思う)
グリパス

グリパス