よしヨッシー

オッペンハイマーのよしヨッシーのレビュー・感想・評価

オッペンハイマー(2023年製作の映画)
5.0
アカデミー賞作品「OPPENHEIMER」

マンハッタン計画のリーダーであり、原爆の父と呼ばれているオッペンハイマーの半生を描いた伝記作品。

非常に情報が多い💦。これはこうで、この人はこんな感じみたいなことを頭の中で整理してたらあっという間に終わってしまった。過去に戻ったり、現在に行ったりと忙しい感じですね。

ですが、作品の完成度は最高級です!!内容の深さも技術も圧倒的!!私なりに感じたところをまとめてみようと思います。

技術面
特に音響。実験のところや原子のぶつかり合い、演説のシーン等、映画館全体が揺れているような振動は映画館ならではの体験でした!特に、トリニティ実験での音の緩急、オッペンハイマーのスピーチのシーンの地響きはすごく、圧倒されました。音のズレを活かしているのも後々、そうだったのかと脱帽。いい意味で期待を裏切られました。ノーラン映画をIMAXで観るべき理由の一つにこれがあります。

俳優の演技力
何より、キリアンマーフィーの演技が素晴らしいです。オッペンハイマーの神経質な点から、天才あるあるの尊大すぎる態度やユーモア、カリスマ性は今まででベストでしたし、他のアクターで演じているのは全く想像できませんでした。特に、眼で見せた演技。精神的に追い込まれているところから、マンハッタン計画のプロジェクト時の目力は圧巻でした。
それよりも私はエミリーブラントのキティの演技が好きでしたね!知性とユーモアを交えてファイト!!と言ってオッペンハイマーを支えていく姿は逞しかったです!口を使った表現も良かったです。

音楽
Can you hear music?を筆頭に、この映画の音楽は心を揺さぶる音色です。バイオリン等を使い、不気味で不安定な音や芸術的で感動を呼び込む音を使ったり。有機的で重曹的な音楽は没頭感をもたらしてくれます。これらの音色はまさしくオッペンハイマーの複雑性であり、紙一重さそのものと感じました。全てが美しく、魅了されました。IMAXのような大音量で聴くのは最高です。

個人的に好きな面
後半にあたり、オッペンハイマーが追い詰められていく、考えを変えていく姿がありますが、私は前半の部分がわりと好きですね。Can you hear music?やオッペンハイマーの改革者的な凄さ、勤勉さ、知的好奇心など様々な面を見ることができたからです。あのシーンはもはや畏怖です。全体の構成からしても、ここら辺は明るいというのも理由です。

まさしく「アマデウス」
この映画は反核映画としてではなく、オッペンハイマーという1人の天才の半生として観るとより良さを感じられるようになっていると思います。それこそ、アマデウスのような。そうすると、前述した前半の大学でのシーンのほか、ストロース、ローレンス、ジーンの立ち位置や前半部分の理解が進むと思います。
オッペンハイマーという才能に惚れ込むラビやグローヴスに対し、嫉妬や執着があるストロース、ローレンス、テラー。
ジーンとのシーンもアマデウスを意識すると違った見方ができるのではないかと思います。アマデウスも奔放でしたし。
その天才が現代に至るまで続く核の世界というパンドラの箱を開けてしまったことへの苦悩と政治的追放に至ってしまうのが言葉で表せない感情になります。

これら以外にもシュバリエとの星の話など、セリフを含めてオッペンハイマーのメタファーを多用していて見応えがあります。

インセプションやインターステラーのような壮大さや爆発力はありませんが、咀嚼していく中で、気づきが増えてくる。まさに文学作品。