YutaTakaue

オッペンハイマーのYutaTakaueのレビュー・感想・評価

オッペンハイマー(2023年製作の映画)
3.8
3時間という長尺の中に非常に情報量多く、密度濃く、大きく3つのエピソードを時系列を変えながらランダムに描く作風に非常に集中力を強いられる作品。本当にこの作品を理解し、評価するならオッペンハイマーへの予習は確実に必要で、その労力を掛けなかった私はこの作品背景の1割も理解出来ていないと思う。
多分製作者に対して1番失礼な観客だと思う。

しかし、オッペンハイマーを1人の人間として観た時に、天才でありながら非常に人間味のあるキャラクターに惹き込まれた。
1人の科学者として、誰も成し遂げなかった未知の原爆開発への探求心と、それをトリニティ実験で叶えた後に初めて実感する、取り返しのつかない探求心への代償。
それが前半と後半でキリアンマーフィーの表情から苦しいくらいに感じ取れ、また彼が見る幻想の変化が映画的で面白い。
終戦後、彼が公の場で称賛される中スピーチを行うシーンは今作のハイライトに感じた。彼が創造する原爆の被害が幻覚としてその会場に映し出される。公聴者の顔がただれたり、地面に転がる黒焦げの亡骸、ただの酔っ払いの嘔吐が原爆の影響のようにも見えてくる…
彼が内面に隠す罪悪感に対しての悲痛な叫びが聞こえて来そうだ…
YutaTakaue

YutaTakaue