きょ

オッペンハイマーのきょのレビュー・感想・評価

オッペンハイマー(2023年製作の映画)
5.0
破壊者の魂を追う壮大な叙事詩


前置きとして、自分は今作でJ. Robert Oppenheimerの全てを分かったつもりなど毛頭ない。
史実を描く上で、映画に必要な場面だけを切り抜いたプロットは必要不可欠であるし、ある一貫したテーマを扱えば作品としての価値は生まれるからだ。

さて、日本人としてこの作品から何を感じ取れば良いのか。
中盤のトリニティ実験から手の震えがしばらく止まらなかった事実。
歓喜の声を上げるアメ公(敢えてこう書くが)には強烈な違和感を覚える一方で、主観的に半生を追っているため共感も抱いてしまう。
全方位に広がる爆風やオッペンハイマーの主観を写した映像体験、神経の末端にまで狂気と焦りを響かせる劇伴。史実を描くプロットとしてはユニークな時系列が前後する構造など。
素直に、映画として「面白い」

なんだか、悔しい。
日本人として、批判的な目で観たい一方で、映画としての出来栄えは最高で、どの要素も好ましい。(原爆擁護の思想は一ミリも感じなかったし)

激動の時代を生きた主人公は、傲慢に衒う若き日々と、自身の罪に押し潰される戦後を過ごす。
1人の破壊者としては、あまりにも弱く多面的な人物だった。

IMAXにて鑑賞
きょ

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