かじドゥンドゥン

オッペンハイマーのかじドゥンドゥンのレビュー・感想・評価

オッペンハイマー(2023年製作の映画)
3.2
ユダヤ系の物理学者オッペンハイマーは、原子爆弾開発を先導し、成功、「原爆の父」と称された男。「ナチスドイツが先に原爆を手にするくらいなら・・・」という大義名分で自分の良心をごまかしごまかし研究を進めたオッペンハイマーも、ドイツ降服後、ソ連との対決を見据えて、いまや降伏寸前の日本に標的を変えた段階で、言い訳が難しくなってくる。「原爆を作るのが自分の仕事で、それをどう使うかの決定権も責任も自分にはない」と言ってみたり、あるいは「日本への投下でその威力が示されれば抑止力が働き、この世界から戦争が消える」と言ってみたり、右往左往する。

そして、第二次大戦が終わって、東西冷戦に突入すると、水爆開発に反対し出したオッペンハイマーの過去が曝かれ、あるいは捏造されて、共産主義者の濡れ衣を着せられる。個人的な怨恨を動機とした、一種の陰謀。盟友たちの証言で、どうにか汚名は晴れ、勲章まで授かるものの、自身の道義的責任に対してはいまだに答えを見出せない。

予告編のような速いテンポで映像が繰り出され、オッペンハイマーの半生を追っていく。科学的な解説や人間関係など、情報量が多いので、ついていくのが大変。一つ一つのシーンや画に情緒や美意識がともなっているとは言い難い。視覚映像から少し遅れてやって来る爆音はすさまじく、ビックリした。(ストレスでもあった。)

アメリカ政府が日本に2発落とすと決定し、そのことを、迫る会談でソ連のスターリンに一言通告しておく必要があるため、日程を前倒ししての爆破実験。(ここはじっくり描かれる。)世界を壊せる力の実現を目の当りにした開発者たちの驚きと歓喜には、観ているこっちも一瞬同調しそうになったが、これが我が国に落とされると思うと、苦々しくもある。