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オッペンハイマーのanonaのレビュー・感想・評価

オッペンハイマー(2023年製作の映画)
4.1
前半と後半で全く違った面白さを見せる映画だった。

WW2終了直後までを前半と見立てると、前半は原爆開発を描いた物語で、歴史物語として、比較的シンプルに楽しむことができた。理論から実装まで組み上げて原子爆弾を製造する過程は興味深く、科学者村まで作っていたことには呆気に取られた。

後半は打って変わって諮問を中心としたドラマで、政治的なゲームを観ているよう。途中から情報を流していたのはストローズではないか、と疑念を鑑賞者に膨らまさせてからのあっという間の伏線回収は見事。時系列も、モノクロシーンが間に挟まる奴か、と思ってたら見事にミスリードさせられていた。完全にノーランの掌の上で転がされていました。笑

反ナチスの強い意志から原子爆弾開発を主導して来たオッペンハイマーがヒトラーの死により大義を失う。日本の投下が成されてからは十字架を背負って生きている様でもあった。

最後のアインシュタインとの対話が印象的。功労者を一度袋叩きにしてから晩年に功績を改めて讃えるのは、決して功労者を労うためではなく、その人自身の贖罪のために過ぎないのだと。
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