Yellowman

オッペンハイマーのYellowmanのレビュー・感想・評価

オッペンハイマー(2023年製作の映画)
4.5
ぶっ飛んでいる。クリストファー・ノーラン御大。
世界中で溢れているなんとなくカッコいいだろう風なインディーズ映画や実験映画を全てなぎ倒して、本作こそが、現在の映画の最高峰の到達点であり、構図、プロダクションデザイン、ライティング、素材、編集、音楽、音響全てひっくるめて新しいスタンダードを提示したと言っても過言では、ないだろう。

ただ、先週観た「DUNE2」でも同じ事が言えてしまうのは、ご愛嬌で。

本作は、日本人の我々にはデリケートな問題があるので、一概には言えないが、作品自体の「主題」と“クオリティ”だけをまっすぐ観て、21世紀の傑作映画である事には、間違いない。実話がベースでありながらまるで先の読めない極上級のサスペンスを観ているかのような3時間。豪華キャスト陣のアンサンブルも見事。

冒頭からインサートされる水や爆発をイメージした短いカット、音楽。全てが絶妙。完全に役が憑依したキリアン・マーフィー。
本当にメンタルの負担が感じられる程の危うさがあった。思い返すだけで、ゾクゾクするのはトリニティでの実験のカウントダウンの描写、爆発シーン、後半の公聴会シーンでの対話の応酬劇。そして、どこまでも残念なロバート・ダウニーJr演じるストローズ。
本作ラストでそんなストローズが気になっていた池の前でのオッペンハイマーとアインシュタインのやりとりが明かされる。まるで時間が止まったかのような、永遠に二人を観ていたいと思わされる、本作唯一の映画マジックを感じる印象的なシーン。
後を追う庶民のストローズが想像していたものとは大きくかけ離れた高潔な時間が流れていて、どちらも孤独な天才の科学者同士にしか理解出来ない悲哀が描かれていた。

編集と音楽が大好物。
 
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