ステイサム

オッペンハイマーのステイサムのネタバレレビュー・内容・結末

オッペンハイマー(2023年製作の映画)
4.5

このレビューはネタバレを含みます

『オッペンハイマー』
公開初日IMAXにて鑑賞しました。
日本人だからこそ原爆誕生のプロセスを知りたいと思った事も原動力のひとつ。

この映画は原作「オッペンハイマー」に基づく、天才物理学者の栄光と没落の人生を描いた伝記だ。

本作は1954年に密室で行われた聴聞会を主軸に描かれる映画です。この聴聞会の時点は主人公オッペンハイマーはすでに原爆開発を成功させた科学者だが、広島、長崎の惨状に衝撃を受け、水爆実験に反対する彼に国家機密の取り扱いを今後も続けて良いかの判断目的で聴聞会が開かれた。
過去の原爆開発時の彼の言動を膨大な資料や証人の証言を元に、国家功労者である彼に次々と厳しい質問が飛ぶ。

時間軸が遡り、実験が苦手な"若き"オッペンハイマーは実験の授業でひとり失敗し叱責され、教師のリンゴに毒を盛るが就寝夢うつつに恐ろしくなり慌ててリンゴを捨てる。

稀有な天才科学者だがどこか不器用、弱さ、脆さを持った彼は家庭を持っても妻に内緒で共産党員の女と肉体関係を続ける。
聴聞会では女との密月のほか彼の弟も共産党と関わりある事が明るみになり、ついにオッペンハイマーはスパイ容疑者となる。そしてFBIも加わり、聴聞会から4年後の公聴会では原子力委員会議長と対立。大統領令により国家機密から隔離、危険人物として晩年までFBIの厳しい監視下に置かれる事となる。

時間軸は作中何度か遡るが、
原爆開発チームリーダーとして全米各地から最高の学者を呼び、砂漠地帯で核実験「トリニティ実験」を成功させたシーン。
緊迫のカウントダウン。目を守るゴーグル越しに辺り一面真っ白になる閃光。
巨大なきのこ雲がIMAXスクリーンを埋め尽くし、映画鑑賞者と実験メンバーが同じきのこ雲の恐ろしい大爆発を浴びるように体験する。爆発は無音で描写されるがもの凄く激しい。
CGを使わず爆発力を魅せる。
このシーンは無音のまま終わる演出なのか?と思ってから……………………
数秒後に地津波の様な轟音がうなりをあげる。音の振動が尋常でなく、びりびりと鳴り響いて耳が段々とくぐもってからやっと轟音のハイライトシーンが終わる。

核実験は大成功の成果をおさめ、全米が沸き立つがオッペンハイマーの表情は硬く…ショックを隠せない…。

この成功シーンのあと、残り1時間近く彼の没落シーン。長い苦悶が続く。

栄光と没落…
国に利用され称賛されたもののその栄誉は突然潮目が変わると容疑者へと変わる。

映画ランボーは暴れたけれど、オッペンハイマーは暴れることすら出来ず…。

人間の汚さ、大衆心理、政府の野望と嫉妬が複雑に絡み合い、なす術のない苦悩を強いられた科学者。
未曾有の大量破壊兵器の生みの親は、皮肉にも核の恐怖を世界にもたらし、今も私達をおびやかしている。

補足情報
核実験成功を国民と喜ぶステージに登壇したオッペンハイマーはスピーチの際にふと、目の前が閃光と爆風で皮膚が溶けて吹き飛ぶ女性を見るシーンがある。
女性はクリストファーノーラン監督の娘さんに演じて貰ったそうだ。
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