溌狩

オッペンハイマーの溌狩のレビュー・感想・評価

オッペンハイマー(2023年製作の映画)
4.0
・第二次世界大戦下のアメリカ。物理学者のオッペンハイマーがいかにして「原爆の父」と呼ばれるに至ったのか、そして戦後なぜ彼は公職から追放されたのか……というおはなし。

・まず……変な映画すぎる!!! 時間軸が複数ある上、時系列もあっちこっちに飛ぶし、シーンの繋ぎ方や音楽の使い方もこれまでの映画では観たことがない。3時間ずっと回想シーンを観ているようだった。
登場人物が異様に多いのに誰がどんな人間なのかほぼ説明がなく、今のシーンが西暦何年なのかの説明もない。正直に言うと難しい!!! バカだと思われてもいいから声を大にして言いたい。難しい!!! でも、面白い!!! 面白いし、怖い。

・科学者と戦争の関係を描くときって、「戦争に"巻き込まれていく"」とか「研究が"利用された"」とか、科学者が受動的に戦争へ関与していく形をとることが多い気がするのだけど、オッペンハイマーはかなり前のめりに戦争と政治に関わっていくのが新鮮だった。科学者は無垢な存在で、一度研究を始めたらその性として止まることができない、みたいなパブリックイメージを自分も抱いていたので、進んで人の命を奪いに行くオッペンハイマーの姿は恐ろしかった。
後先考えずに大量破壊兵器を生み出したのではなく、後も先も考えた上で大量破壊兵器を生み出したことが怖いんだよな。そこには明確な殺意があったと思う。

・原作本を読んでからもう一度観に行きたいな……。さすがに1回だと理解が追いつかない部分が多かった。なんでクリストファー・ノーランは時間をいじらないと気が済まないんだ。誰か彼を普通に時間が進む世界へ連れ戻してあげてほしい。心配になる。
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