CHICORITA主任

オッペンハイマーのCHICORITA主任のレビュー・感想・評価

オッペンハイマー(2023年製作の映画)
5.0
第96回アカデミー賞にて作品賞、監督賞ほか7部門を受賞するなど賞レースを席巻した2023年最大の話題作。
「原爆の父」オッペンハイマーの伝記という、被爆国である日本にとって非常にセンシティブなテーマかつ、バーベンハイマー炎上事件などもあり公開が危ぶまれましたが、ついに日本公開されました。

間違いなくノーラン監督の集大成にして大傑作。
アカデミー作品賞に相応しい重厚なテーマと、素晴らしい役者たちの演技、IMAX撮影をフル活用した風格溢れる映像。
褒めるところはたくさんありますが、最も見事だったのは、撮影と編集であると思いました。
当然、アカデミー賞では撮影賞・編集賞も受賞しています。

ノーラン作品といえば「時間操作」。『メメント』『インセプション』『インターステラー』『ダンケルク』『TENET』といった一連のノーラン作品において、独特の時間操作の演出がなされていたのは周知の通りですが、本作『オッペンハイマー』はその極致といえる作品でした。

視点人物による画面カラーの使い分け、カット単位で変わる時間軸に、超高速な編集テンポ…。ノーラン監督作の傾向や事前情報があっても初見では着いていくのがやっとで、見終わる頃には脳みそが大量の糖分を消費したのか、疲労感と空腹感に襲われました(笑)

比較的空想科学的なエンタメ映画を撮って来たノーラン作品としては、異色とも言える重たい歴史・科学をテーマとして扱っている作品ですが、手触りとしては非常にノーランらしい映画だったと思います。

核兵器開発の闇の部分をどのように扱っているかに関しては、多くの批評で既に述べられている通り、間違いなく本作は反核・反軍拡の映画であると言えると思います。
広島・長崎への原爆投下とその惨禍の具体的描写が無いのは確かですが、本作の後半部では核兵器開発・使用に対するオッペンハイマーの後悔や罪悪感、さらなる核兵器(水爆)開発への反対が繰り返し描かれており、戦勝国側が製作した映画としてはかなり踏み込んだ批判的描写になっていたと思います。

「この男が、世界を変えてしまった」

映画ラストのオッペンハイマーのセリフと呼応するこのキャッチコピー。
世界を変えてしまった、破壊してしまった罪に対し、十分な罰は与えられたのか?
映画で描かれたとおり、戦後のオッペンハイマーは赤狩りによって不遇の人生を送りますが、果たしてそれは彼への罰たりえていたのか?
罰は彼個人ではなく、この先の人類全体にふりかかるのではないか?

そんな問いかけを投げかけられたような映画でした。

映画館で観るための作品作りに心血を注ぐ男・クリストファー・ノーラン作品ということで、劇場鑑賞は必須レベル。また可能であれば監督の意図した画角に近いIMAXシアターでの鑑賞がおすすめです。

最後になりますが、クリストファー・ノーラン監督、アカデミー作品賞・監督賞ほかの受賞、本当におめでとうございます!
ずっとファンです!これからも応援しています!!
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