このレビューはネタバレを含みます
映画のシーンごとに、主人公や妻、恋人や同僚、ライバルやヴィランなど、登場人物それぞれの視点に立って物語に入り込むのは、自分のいつもの観賞態度だ。
しかし今回はその他にもう一つ、別の視点が前提となってずっと傍らにあった。この物語には登場しない、"被爆国の人間"という視点だ。「傍らに」と言ったが、この眼差しは、まるで通奏低音みたいに上映中ずっと客席全体を流れ続けているように感じた。
ストーリーは、各々の権益で揺れる主人公の社会的名誉問題を主軸として、彼の思想の変遷や女性関係、世界情勢の雲行きや科学者たちのプロジェクトX的なエピソードなどが描かれる。
どのスケール感でどの視点に立ってみても、私には酷くやるせない気持ちが残った。
涙がこぼれたシーンは、締め切りギリギリで実験が成功し、祝賀ムードになる場面だ。トラックで出荷されていく「装置」。あの夏の出来事である。
キーとなる役で、達者な役者さんたちが活躍しています。
総合的には、観て良かったと思っています。