オッペンハイマーのいんそむにあのネタバレレビュー・内容・結末

シネマサンシャインにて鑑賞。

「原爆の父」と言われたオッペンハイマーを題材にした本年度アカデミー作品賞受賞作。

原爆を開発するマンハッタン計画の中心として活動する姿が描かれるが、街ひとつを用意した上で人員を集め計画を進めるという大がかりなそれは実現に近づいていくにつれ、高揚感すら伴ってくる。

だがやはり映画に没入すると同時に、「広島」「長崎」の地名が出てくるたび自分の胸の中にざわつくような感覚もどうしても芽生えてしまった。

そこで立ち止まってくれれば…と思わずにはいられない局面が何度も訪れる。実験が成功する瞬間の迫力は凄まじいが、その轟音はこれ以上ないほどにおぞましく感じた。

映画の印象ではオッペンハイマーは、原爆の威力を見せつければ世界は二度と戦争をしなくなると考えていたようだが、実際はより強力な兵器が求められるようになり、ここに至って彼は水爆の危険性を主張し、当局から共産主義者の疑いをかけられる。

自分が成したのは戦争を終わらせることではなく、おそらく人類が存在する限り永遠に終わらない「血を吐きながら続けるマラソン」の号砲を鳴らしたことだと知ったオッペンハイマーの戦慄した表情とともに映画は終わる。その顔に対して何と言えばよいのか言葉が見つからなかった。