ジュライ

オッペンハイマーのジュライのレビュー・感想・評価

オッペンハイマー(2023年製作の映画)
4.2
内容はひとまず置いておいて、とりあえずこの上映時間なら途中休憩を入れてくれと、私がノーランの家族か友達だったら絶対に本人に言います。
観客の精神力(というか膀胱力)に挑戦しすぎ。

中身のほうは、前評判で聞いていた「広島と長崎の被害の描写が足りない」というのはまあ確かに。
ただノーランが今回照準を合わせてるのは広島・長崎ではなく、ひたすら「人類史におけるひとつの大きな分岐点を作った、オッペンハイマーという男およびアメリカという国」がはまった陥穽を描きたかったのでしょう。

だからといって、すなわち原爆被害を軽視していると皮相的に捉えるべきではなくて、これも世界を捉える切り口の一つであり、世界の表し方の一つだと思えば、これはこれでいいのだと思います。

そもそも「完全に全世界に公正な目線」で描ける人なんかどこの国にもいるわけないんだから、ノーランが撮る限りは基本的にアメリカに立脚した視点になるのも無理はないんですよね。
日本人が望むような描写や説明を期待するなら日本人監督がアンサームービー的なものを撮るしかないと思うけど、でも変に鼻息荒くして思想を込めちゃうタイプの監督じゃダメだし。
歴史を万人に向けて語るのは難しいですね。
ジュライ

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