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オッペンハイマーのgockのレビュー・感想・評価

オッペンハイマー(2023年製作の映画)
3.5
めちゃ遅れて日本で公開された
天才オッペンハイマー(演;キリアン・マーフィー)が終戦後に聴聞会と、凡人ルイス・ストローズ(演:ロバート・ダウニーJr)がその数年後に受けてる公聴会。
2人や聴聞会に呼ばれたオッペンハイマー関係者が語る内容としてオッペンハイマーの半生や、マンハッタン計画、トリニティ実験、終戦……などが描かれる

映画始まった序盤はこの構成に面食らうが「これはオッペンハイマーという男を語る映画なんだな」という映画の背骨に気づくと、素直に観れるようになる
三時間もあるが、二人の女性との出会いと別れと結婚出産などの数分で、凄いスピードで進んでいったりしてかなりテンポ良い
本作の中で素直に面白いのは中盤の「計画のメンバー集め→マンハッタン計画→トリニティ実験→大成功」のくだりだろう。『七人の侍』パターンというか、間違いないおもしろ映画黄金パターン。
その後は、罪悪感や世界の行く末にオッピーが苦悩するのと、嵌められた聴聞会という苦しい展開。そしてカッコいいラスト……
ノーラン作品の中で一番面白いくらい傑作だと思ったが、同時に原爆落とした先への興味の無さも凄く伝わってきて素直にアメリカ人のようには盛り上がれないところがある
自分は広島出身、と言えば「原爆落としたヒロシマ・ナガサキの惨状を劇中で描写しないから嫌だったん?」と思われそうだが、そういう短絡的なことではなく
オッペンハイマー=ノーランは「原爆を作って永遠に変わってしまった世界」「原爆落とされた地の人たち」という広い視野での懸念や情は確かにあるのだろうが、どこまで行っても「天才の上流ゆえの軍師目線」なので、そこが気になる。「全身にガラスが刺さって皮膚が溶けて水を飲んで苦しみ抜いて死んだ広島の罪のない子供」といった具体的なところには意識がいってない。というかアカデミー賞でストローズ役が素晴らしかったダウニーJrが「無意識に」キー・ホイ・クワンを無視したりオッピー妻役が素晴らしかったエミリー・ブラントが「このドレス、原爆みたいでイケてない?」と言ったりして全体的に無神経さが目立つ
といっても「レイシストだ!」と言いたいわけではなく彼らもノーラン=オッピーのように世界や目に見える範囲の人のことには愛があると思う、ただアジアにも人がいて彼らもものを考えたりもするって事が目に入ってないだけなんだと思う
だから差別がどうこうじゃなくて、それ以前の問題で、そこを各々が自覚して一歩一歩冷静に発信していく事が大事だと思った
映画自体は傑作

ブログに感想書きました
https://gock221b.hatenablog.com/entry/2024/03/30/235645
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