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オッペンハイマーのYATのレビュー・感想・評価

オッペンハイマー(2023年製作の映画)
4.5
本作に関しては、史実をかなり忠実に描いていると感じました。
ノーラン監督の演出や切り取りはあっても、隠喩は無いと思います。

普段意識しないだけで、人類史のエポックメイキングな転換点は核分裂及び核融合エネルギーの利用である事。

産まれた時から核の傘の脅威という人類最大のリスクに晒されているのに、キャパオーバーのため人間が理解が出来ない事実

それを知らしめるため,nuclear before とnuclear after の時代の転換点を描く事で恐怖の誕生を目撃させる事がメインでしかないと思います。


理系で飯食ってる者の端くれとして。

絶対的なリスペクトを物理学者と数学者に理系は持ってる。
天才すぎるもん。

その最高の知性が集まり作ったもの、特に人類の進化を表現する最大の発明でもあるもの。

また人類が人類の力によって絶滅する能力を獲得したもの

核爆弾

ある種このテーマ以上に人類を表すテーマは無いわな


「300年の物理学の成果が爆弾の開発で良いのか。」

と泣くシーン。

感極まるものがあった。

理系大卒以上は物理や数学をある程度、本気で理解しようと嫌々ながらも取り組んだ経験があると思う。

大人になっても勉強は続き、仕事の苦悩も知った上で改めて気付く。
学問の探究は想像を絶する孤独で辛い道である事を。過去の偉人達は文字通り命をかけて学問を突き詰めた事を。

その偉人の成果に敬意を払い、彼らが考えついた概念、思考、世界の見方を咀嚼し、新たな真理を明らかにしていく。

ニュートンが言う「(先人達の)巨人の肩の上にのる」

過去の偉人達の孤高な取り組みに対する敬意を理系は自己学習の何で嫌と言うほど意識させられる。

人類の最上位の知性集団であるマンハッタン計画のメンバーは、より深く感じているだろうし、他人に理解されない知的探究の孤独を癒す友人に近い尊敬を抱いているとすら想像する。

悲しいのは映画後半が示す通り、醜悪な政治という名の人間の本能、遺伝子の表現系を示すような人間行動。

最高の知性等の結論は、核の報復連鎖は不可避という結論の哀しみ。

監督もこの時代の先にその結末が見えている。
だからこそ、気づいてる人間は、人間の責務として無関心にならずに、核問題について今一度真剣に考えるべきだと深く思った。

ps:
核爆発による大気・大洋発火説はマジで懸念されていて、巷の就職面接で定番となってるフェルミ推定。
そのフェルミ推定を作ったエンリコ・フェルミ(ノーベル物理学賞)は最後までリアルにビビってたそう。

psps:
ウクライナは世界3位の核兵器保有国だった。
核放棄をした結果、ロシアは侵攻した。

世界がウクライナ侵攻に対して怒りを抱かなくてはいけないのは

・世界のために核を放棄した国

・放棄の結果侵攻をした事実を作る

・結果、北朝鮮やパキスタン等が核を放棄する選択肢が無くなった。(ゲーム理論のロジック)

プーチンの功罪はとてつもなく大きい。

核による滅亡の秒針を確実に進めてしまった。

マンハッタン計画が現在のこの世界を動かすルールであり全ての人類は常に影響下にある事をもっと大きく受け止めないと子供・孫世代で終わるでマジ
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