さわの

オッペンハイマーのさわののネタバレレビュー・内容・結末

オッペンハイマー(2023年製作の映画)
5.0

このレビューはネタバレを含みます

音の暴力が凄まじいので劇場で観ないとあかんやつです。
ネタバレなんだけど爆発音はもちろん、それよりも人間の出す音、声と足音に恐ろしさを感じますよ。
全然歴史に明るくないから時代の流れ、第二次世界大戦の終わり頃の出来事としては知っていても、オッペンハイマーと取り巻く人と状況、その後についてはさっぱりではあります。なのでオッペンハイマーさんがやたら不倫?してたのとかはほーんって流しちゃうんだけど、戦後(というかアメリカだといまだ戦中なのか?)にあんな詰められ方したら心折れちゃう…って視点で見ちゃう。
被害も影響も充分に想像できていて、「大気が燃える」未来も想像できて、なお祭り上げられなきゃいけなかった立場とその後に詰められなきゃいけなかった、その心情が揺れる背景と責める足音でこっちまで責めてくるのがめちゃくちゃ辛いです。実験成功した後の(後ろに星条旗)とか原爆投下後の祭り上げとか、すげえ嫌味に見えた。あれは嫌味なのか。嫌味な気がするぜ。
ギリギリ祖母から戦時中の話を聞けた世代で、戦中戦後前線銃後の映画とか文章を読んできた日本の視点はそれなりにあるつもりだけど、アメリカの人が言うところの戦争を早く終わらせる為に必要だった、って本当に思ってたんだな(今も?)っていうの分かるようになってたな。兵隊で出て行った家族が無事に帰ってくるみたいな泣いてる描写あったし、落とされた方は最悪だけども。量子の粒と波のイメージがめちゃくちゃ綺麗なのが最悪さを増してるな、ビー玉も。だから人も物質も本来あんなに美しいのに、意思や思惑や社会や状況みたいなものが美しさを消してしまうこともあるような気がするなあと思ったり、だから一瞬垣間見えたりする美しさに、惹かれるのかも知れませんがな、などと。爆発の炎は美しいんだよなあ、と思うことに不謹慎さが過ぎってしまうのが悲しいよね。
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