オクターヴ

オッペンハイマーのオクターヴのレビュー・感想・評価

オッペンハイマー(2023年製作の映画)
4.5
グローヴスと初めて対面した時に起きた科学者としての興奮が破滅へのカウントダウンにつながる。この映画史上最悪の意気投合において演出による興奮があるのと同時に成功に歓喜してはならぬという抵抗感が交錯することでようやく矛盾の物語が浮かび上がるのだ。あと、キャストについては、まずボーア役を演じたケネス・ブラナーがいい味出してた。登場シーンは少ないけど、やっぱりノーラン作品に必要な顔してる。そして、アインシュタイン役のトム・コンティも良かった。180分間の中でもアインシュタインが出る時間は何かホッとする。物語は全体的にずっと何でもないシーンでさえ緊張感がある。さらにトリニティ実験が始まる時の緊張感がすごいことになってて、序盤からここまでの持っていき方が最高にうまいと思った。なかなか心情を読ませてくれないキリアン・マーフィーの演技も絶妙なんだよね。ただ、オッペンハイマー中心の描き方が映画としてのバランスを壊していて、伝記ものとしても時代が限定されている分、やや中途半端な印象を受けた。しかし、ノーランは昔から派手さを嫌う傾向があって、それが今作では良い方向に作用していたと思う。謙虚というか、もっと描けるのでは?と毎回思わせる。