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オッペンハイマーのDのレビュー・感想・評価

オッペンハイマー(2023年製作の映画)
1.9
映像、脚本、音楽、内容、ラスト、見せ方、演技のどれをとってもつまらない。オッペンハイマーの妻を演じたエミリーブラントだけは物凄かったが…。
3時間がちゃんと3時間。
つまり3時間ものあいだ、アメリカの大嘘ヘゲモニー物語を無理やり見せられているような時間が続くのである。

アインシュタインや女性陣のモノ化(objectification)も目立つし、被爆者の苦しみを考えてしまうオッペンハイマーの内面と、アメリカ国民の狂喜乱舞という外面を、単一シーンで表現するあの演説のところも、精神描写としてチープすぎる。マッシュルームも、実際の映像を見たことがある我々からすると実にしょぼい。とにかくしょぼい映画だった。音の使い方も短絡的、実につまらない。ついでながら言うと量子力学とか、物理学一般の扱いもかなりチープ。科学の素人が「科学ってすげえ!」と無知無教養で理想化したものにしか映らない。はっきり言って、原爆投下というとんでもない戦争犯罪とその被害者を「オモチャ」にしているだけの映画である。しかも、罪を背負うべき開発者を被害者のように描いて。評価しているアカデミー他の審査員の方々や、より広く欧米の特権を持つ方々、そして日本の少なくない数の人たちは、みんな戦争犯罪・虐殺をオモチャにして楽しんでいるんだろうな。イスラエルによるパレスチナ人の虐殺に自分たちが思い切り加担していることなんて、気にも留めずに。


原爆やその被害者、開発などを矮小化しているという指摘はDemocracy Now!がいち早く報じ、最近だとBBCなども取り上げていたが、その通り。バーベンハイマーは観客が勝手に起こした問題ではない。映画自体に問題がある。
全てのシーンが「だから何なんだよ」(so what?)で片付けたくなるし、それで片付いてしまうし、なによりそれで片付けねばならないものだった。「オッペンハイマーも苦しかった」とかどうでもいいんですよ。だから何なんだよ、です。


ノーランどうしちゃったかなあ。ダンケルクもこれも、歴史に向き合わない人間の作品なんだよな。そういう人間なのかな。「この時代に原爆のことを知って欲しい」みたいな気持ちで作ったという趣旨のことをノーランが言っているのを観ましたが、「英国出身の大金持ちの白人様はそりゃあこの程度の粗くて雑すぎる認識でも、世界から手放しで賞賛されますよね。」としか思いません。
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