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オッペンハイマーのKTのレビュー・感想・評価

オッペンハイマー(2023年製作の映画)
4.2
21世紀以降、いまやネームバリューで最も観客を動員できる監督の一人となったクリストファー・ノーラン。

ノーラン監督の映画で頻繁に取り入れられる時系列の入れ替えを今回はエンタメ的な要素以上に人間ドラマパートの補強として上手く活用していた。というより、今作自体がこれまでノーランのエンタメ映画からアート映画として大きく舵を切っている印象を得た。

原爆の兵器としての人道的側面と科学者のエゴとしてそれを実現させたいというオッペンハイマーの葛藤は非常に感情移入しやすかった。一方で、原爆開発の必要性が懐疑的になった際のそれを押しのけるオッペンハイマーの発言、そして広島・長崎の被害をみて苦悩するオッペンハイマーには感情移入と観客を突き放す姿がある。

そんな彼な二面性とストローズとの確執を濃密に描いた三時間であり、見た後は観客に思考を巡らせる素晴らしい構成であった。

しかし、正直に言って残念に感じたのは原爆実験の成功シーンの爆発が本当の原爆とは感じられないところであった。CG撮影を嫌い実写表現に監督が拘った結果、少しばかりショボい爆発になっている感は否めない(音響はIMAX鑑賞のため、とてつもなかっただけに残念)
だが、見方を変えたら存在しない方良い爆発兵器による、もっと凄まじい爆発を観たいというマッドサイエンティスト的な感情を観客に掻き立てさせるという意味では成功してるとも言える。
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