福

オッペンハイマーの福のレビュー・感想・評価

オッペンハイマー(2023年製作の映画)
3.9
まずは、この映画を観れてよかった。クリストファーノーランには映画を作ってくれてありがとうと言いたい。撮影手法や光、音を絡めた見せ方にはノーラン節が光りつついつも新しく惹き付けられる。

「方程式は楽譜だ。読むだけでは意味がない」
理論から奏でられる音楽をただ愛する科学者でい続ける選択肢はオッペンハイマーにはなかったのだろうか。

研究者たちが歓喜に沸いているシーンは悔しくて悲しくて涙が出た。
新しいことを成し遂げた時の周囲の阿鼻叫喚や一喜一憂にどうしようもなく虚しさを感じる。オッペンハイマーがどんなことを思ったのか、今はもう分からない。爆心地の広島、というコメントに「長崎もだ」と付け加えたのも、被爆者の人数を覚えていたのも当然だと思ったし、現地写真は目を背けず見てほしかった。間違いなく彼も罪の一端を担ったのだから。

先日ちょうどGoogleの社員と話しても思ったけどアメリカ人は本当にとにかく出荷(ローンチ)しろ思考。後先を考えずとにかく実行に移す姿勢は日本の「飛ぶ鳥跡を濁さず」とは間反対なのだろうなと実感する。
近年の歴史を主導してきたのは米国だ。自分達の行いが人や、他国の歴史や、自分達にどう影響するかは二の次にしてとにかくやってみる。その後はいつもはぐらかす。だからあの国には機密が積み重なり、それがまた次の悲劇を生んでいる。政治や組織対立ばかりが過激化し、その側で人が死のうが気にしない。

「目的は手段を正当化する」自分の選択が、誰かを悲しませる凶器になり得ないか、決断に誇りを持てる日本人でありたいと思った。
福