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オッペンハイマーのsekaiseのネタバレレビュー・内容・結末

オッペンハイマー(2023年製作の映画)
5.0

このレビューはネタバレを含みます

インセプション並の時空階層から成り立ち豪華キャストと映像美、BGMにより緊迫感に圧倒される180分。時系列を何回か見失ってしまうほど…

「ナチスに原爆を落とされるくらいなら対抗するしかない」囚人のジレンマを盾にマンハッタン計画は進むが歴史に残る負の遺産を創り出してしまう。

天才オッペンハイマーはPJT当初からおそらく未来を見越していた。原爆投下による終戦は1つのパターンとして想定していただろう。結果的に軍の同調圧力や政府の思惑により創造物は手から離れるが葛藤と罪悪感だけが染み付いた。また秀才の側面をもつ一方で、毒リンゴを作ったり(真相不明)、妻のキティを置いてタトロックを抱いたりと人間的未熟さも垣間見える。責任者の立場で前にしか進めない苦しさ、シラードの請願書にサインしなかったのは圧力から逃れたかったからか、または研究結果を披露したい気持ちや研究的好奇心など複雑な気持ちであっただろう


ストローズは自身の立場とプライドを守るためにあらゆる手を尽くし天才科学者を陥れていく。

こうした葛藤や自己矛盾を抱える科学者と、己の利益を追求する軍や政府が複雑に絡み合い、理論や倫理を超えた共生の意味を考えさせられた。

ラストシーンでは青い瞳から誇りや栄光、悲壮、信頼と絶望、無力感が突き刺さった。

防衛による攻撃は正当なのかまたは罪なのか。

予備知識を入れた上で見る映画は面白い。
分かりにくいものを分かりやすく説明する事も重要だけれど、真理や核心はある程度の忍耐がなければ手に入らない。努力や継続を怠ってはならないと心に留める。
映画を見て乗馬してみたいしギリシャ神話も勉強したいし水爆の歴史も知りたくなった。まずはプロメテウスから調べてみる。

ともかく日本で上映してくれたビターズエンド、製作陣に感謝したい。
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