稔

オッペンハイマーの稔のネタバレレビュー・内容・結末

オッペンハイマー(2023年製作の映画)
3.6

このレビューはネタバレを含みます

大変興味深いと感じた映画だった。

個人的には日本人にこそ、見て欲しい映画だと思う。原爆の父である理論物理学者オッペンハイマーの、原子爆弾を作るまでの過程から使用、その後の軍縮論にて政府から煙たがられ、追い詰められるその姿を描いた作品だが、
原子爆弾実験成功の瞬間に、研究者達が喜び沸くシーンでは、なんとも言えない気持ちになってしまった。
しかしそれは、日本がその爆弾を落とされた側であるからそう思うのであって、もしこの立場が逆だったらと考えた時に、自分はこのシーンを今と同じ気持ちで観られているのだろうか、とも思う。

この映画が、原子爆弾を広島・長崎に落としたことは戦争終結のための必要な事だったと正当化するためのものだと、そう感じる方もいるかもしれないが、きっと日本がその爆弾を使用した側であったのならば、それと同じことをしたのではないかと考えてしまう。

もし日本が原子爆弾を使った側で、オッペンハイマーが日本人だったなら、私は戦後贖罪の念から軍縮を主張する彼のことを、偽善者だと言ったかもしれない。

人種や国、戦争、恒常的な平和について、今一度考えさせられる作品だったと思う。
道徳的懸念とはなんなのか。

余談だが、個人的には原爆の父オッペンハイマーの話ということで、ジョン・フォン・ノイマンの登場を少し楽しみにしながら鑑賞したのだが、作品のテーマ的にも登場せずで終幕し、少し残念に思った。原爆使用の道徳的な認知についてを描く作品である以上、どこまでも研究者気質で非情だったノイマンを描くことは作品に対してミスマッチだったのだと思うが。
稔