塩湖

オッペンハイマーの塩湖のレビュー・感想・評価

オッペンハイマー(2023年製作の映画)
4.0
オッペンハイマーがトリップ?する演出が痛ましくてすごかった。傑作『インセプション』もキリアンの脳内を描いてはいるが、あれは夢の世界の設計紹介みたいな側面もあるからリアリズムに傾く余地がいくらでもあったんだろうな。本作に採用された一人称視点の夢想は「大量殺戮兵器をうみだした人間」のそれとしては手で触れられるものにはない複雑なあいまいさを帯びていて、しかしいつもの重厚さもあって、ノーランの作る伝記ものだ!という新鮮な実感があった。またノーランが夫婦を描くとそこはかとない気持ちの悪さが発生する気がするが、今回はどぎつい。会議室でのセックス幻視はかなり挑戦的。湖のほとりでオッペンハイマーと話すアインシュタイン…その奥には、迫り来るストローズのピンぼけ姿。『ダンケルク』全編より良いタイム・サスペンスしてるワンショット。
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