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オッペンハイマーの708のネタバレレビュー・内容・結末

オッペンハイマー(2023年製作の映画)
4.5

このレビューはネタバレを含みます

180分が長いとは思いませんでしたが、あっという間というわけでもありませんでした。でも、ずーっと釘づけになって集中してました。

題材が題材なだけに、ポール・シュレイダーの「Mishima」のように日本公開されずに封印されるのではないかと思ってました。良くてもダーレン・アロノフスキーの「マザー!」みたいなDVD(配信)スルーとか。なので、公開へと踏み切ったBITTERS ENDさんの英断には深く感謝しています。それも、IMAXで観られるという嬉しさ。これは日本公開してよかったと思います。クリストファー・ノーランの映像はもちろん素晴らしいのですが、常に恐怖感を煽るかのような音楽も素晴らしかったです。ほとんどホラーに近い感じでした。

史実なのでネタバレみたいなものは気にせず、オッペンハイマーやアインシュタインのドキュメンタリーを観たり、時代背景的なものを押さえたり、登場人物が多いとのことだったので、人物や関係だけ事前にサラッとチェックしておきました。

J・ロバート・オッペンハイマーの人物像や心の動き、彼を取り巻く人々の人物像、人間関係にフォーカスを当てた描き方によって、原爆の恐ろしさはもちろんのこと、それを利用し、争い、平気で他人を陥れようとする人間のエゴの恐ろしさを痛感できました。過去のエピソードに見えたモノクロパートが、事後のエピソードという時間軸です。

原爆開発や投下を成功させて、アメリカ全土から英雄のように祭り上げられたかと思えば、ロシアのスパイだという容疑をかけられて転落していくオッペンハイマー。予測していた数より遥かに多い広島の犠牲者の数やその現状を目の当たりにして、良心の呵責や罪悪感、葛藤が溢れてきて、その後の水爆の開発に反対していたという事実を今回初めて知りました。そんなオッペンハイマーの弱気さを見て「泣き虫」呼ばわりで出禁にしたトルーマン大統領のクソっぷりよ。原爆投下を決断したのもこのトルーマン大統領です。演じているのが、ゲイリー・オールドマンだったことを観終わった後で知りました。

原爆を投下する場所を決める際の「京都はやめておこう」という会議でのくだりは、アメリカの劇場で笑いが起きたりもしていたそうですが、原爆投下に対する免罪のようなものを、さも高尚なジョークで中和しているかのような発言は、ブラックジョークとしても扱えないほど不快でかなり悪質。日本だからというわけじゃなく、これがドイツに対するものだったとしても一切笑えません。

ていうか、オッペンハイマー夫妻のロバートとキティって、「クワイエット・プレイス 破られた沈黙」のエメットとイヴリンだったのね。まったく気づきませんでした。
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