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オッペンハイマーのmasatoのレビュー・感想・評価

オッペンハイマー(2023年製作の映画)
5.0
クリストファーノーランの面目躍如。

「なぜ広島長崎の被爆を描かないのか」と批判があったらしいけど、この映画において、そこを描いてしまうとテーマがブレるように思う。ノーランが何を描きたかったのか、何を伝えたかったのかを考える...。

「科学や技術に善悪はなく、使い方が問題」とはよく言ったもので、人間を殺戮する目的で超兵器を開発し、エゴと利己心の塊である軍と国家の手駒にさせられた主人公の呵責は、本当に、筆舌に尽くし難い。
大統領と対談するシーンでの主人公の懺悔のような告白、対する大統領の答えが、やりきれないのなんの...。

爆発寸前の憎悪、きたるべき未来の惨劇への後悔
その描き方が"ノーランらしい"スタイリッシュさと重厚さで、この映画はノーランじゃなきゃ撮れなかっただろうなぁと思う。
戦争の善悪、被爆国のダメージ、戦勝国の栄光には焦点を当てず、あくまで客観的に、原爆開発者の男の苦悩を追うことに専念した、伝記映画として素晴らしい作品だと思う。
ただ、“赤狩り”のテーマと“ある1人の男の個人的恨み”がある為に、時系列の入り乱れも相まってストーリーの主軸をわかりにくくしていると感じた。

重い。果てしなく重い映画だった。
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