やっちん

オッペンハイマーのやっちんのレビュー・感想・評価

オッペンハイマー(2023年製作の映画)
3.9
本作はオッペンハイマーの名声と汚名に包まれた生涯を綴る映画だが、彼の主観、何が彼の目に映り、耳に届いたかに焦点を絞るアプローチに目を引く。

彼の主導の元で秘密裏に製造された原子爆弾が広島と長崎に投下される様子を描く場面を欠くのは、その惨状を彼が直接見ることも聞くこともなかったからだ。
その点を考えれば日本人としてある程度納得出来る部分ではあると思う。

この映画は見て、聴いて、そして主人公と共に揺さぶられる作品である。

核兵器は世界を根底から揺り動かし、それは今に至る。
響き渡るサウンドや音楽も破壊的なリズムを刻み観客を揺さぶる。

過去作から見てもノーラン監督にとって視覚とサウンドには極めて重きを置いているかが特に分かる本作の作りになっている。

登場人物も多く予備知識が理解するにはある程度必要とされるが、本作に我々が向き合う方向性の一つとして、彼にとっての映画の本質である視覚と聴覚により揺さぶられる感覚を真に実感、体感することがこの問題作に接する入り込む基本的姿勢なのではないだろうか。
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