すずす

オッペンハイマーのすずすのネタバレレビュー・内容・結末

オッペンハイマー(2023年製作の映画)
3.3

このレビューはネタバレを含みます

原爆の開発責任者オッペンハイマー氏を描く自伝映画。プロジェクトマネージャーの話なので、会話劇に終始し、映画的な快楽は少ない。

まるで象牙の塔から出ない、ロスアラモス砂漠のロレンス。

半分は葛藤するチームマネージャーの話で、後半は科学者としての葛藤。悩み多き映画ゆえに、生真面目で、面白くないくらいが丁度良いのかも知れない。

物語は大きく3部構成になっている。

①冒頭・共産主義者の疑惑の話
研究者時代の教授のリンゴに青酸カリを仕込んだエピソード、アインシュタインとの出会いに始まり、共産主義者の女性とのいびつな恋などが描かれますが、物理の話が文系の私にはさっぱり。

②マンハッタン計画で原爆を完成させる、軍の准将にプロジェクトを任され、ニューメキシコの砂漠に街を作り、大勢の科学者を招き、トリニティ実験に成功。日本に原爆が投下されたと聞くまで。
※この2部だけで十分1本の映画として成立しており、前後が余計なものにも思えます。

③戦後の指紋委員会での追及
原発政策で敵対した、成り上がり政治家の策謀で、指紋委員会に解任動議なされる。弁護士を立て闘うも、仲間の裏切りもあり要職から外される。
エピローグとして、晩年の勲章授与が描かれます。

①③は会話が中心で、裁判劇風の③もサスペンスフルにせず、極めて真摯な人間ドラマとして描かれていきます。

監督お得意のモノクロとカラーの時制差も、余り意味がある様に思えず、監督らしさが最も薄い監督の映画に思えます。

広島・長崎の惨状を、目を伏せるオッピーの描写や予想以上の死者数だけで表現する大人な描写すぎるのも、私には合わなかった理由です。
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